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『REJECT』VALORANT部門は韓国選手起用の新体制に、新考案のトライアウト方式でメンバー選出、リーダーFlax選手&KeNNyコーチ インタビュー

プロeスポーツチーム『REJECT』VALORANT部門の新体制について、リーダーFlax選手、ヘッドコーチKeNNy氏にお話を聞かせていただきました。

REJECT VALORANT 2024

2024年シーズンに向けたロスターは、IGLの Japan Flax選手、努力と才能のかたまり Japan BRIAN選手が残留し、2023年の日本シーンでその実力を見せつけたJapan muto選手 (ex-Jadeite)、Korea Akame選手 (ex-Jadeite)、Korea GangPin 選手(ex-IGZIST)を加えた強力な日韓ミックス構成となりました。

REJECTは、新たに考案したトライアウト方式で新メンバーを選定しており、すでにスクリムでもかなりの手応えを感じる構成になっているとのこと。

今回、新体制についてチームリーダーのFlax選手、ヘッドコーチのKeNNy氏にいろいろと質問させていただくことが出来ました。

海外選手を起用するREJECT新体制

―― 新しいロスターが決定したとのことですが、どのようなコンセプトで選手を選びましたか?

KeNNy
前回は日本の選手だけでチームを作りましたが、今回は海外選手も起用したロスター構成としました。

VCJ 2023 Split 2が終了して、チームで話合いを行ない、エース級の強いデュエリストが欲しいということになりました。日本人の強いデュエリストというのはすでにトップチームに入っていたりして、獲得が難しくなっていたのである程度日本語を理解している韓国人選手の中から数名を見させていただいて、最終的に今回のメンバーに決まりました。

昨年の反省として、選手たちの人間関係を構築してあげることがなかなか難しかったという点があり、今回はそれをふまえて、ある程度既存メンバーと関係値のある選手を選ばせていただきました。

―― ヘッドコーチのKeNNyさんから見た、各選手の魅力について教えていただけますか?

KeNNy
Flaxはチーム最年長で、責任感が強く、チームをまとめて率いてくれるリーダーとしてロスターに残ってもらうことになりました。

BRIANは、自分ではあまり表に出さないのですが、非常に練習熱心で努力家であるところが魅力です。

mutoは、とにかくずば抜けたセンスの持ち主です。

Akameは、すごく熱い男です。人懐っこいところもポイントです。

GangPinは、IGZISTで示してきた実力はもちろん、K-POPアイドルにいてもおかしくないくらいのビジュアルも魅力です。

―― リーダーのFlax選手から見たチームメイトたちはどのような印象でしょうか?

Flax
いっしょに1年間やってきたBRIANから話しますと、KeNNyさんが話されていたとおり、そんなに表に見えてこない部分はあるのですが、かなり練習するタイプの選手です。

そしてポテンシャルの高さというのを感じる選手で、のっている時、特にVCJ 2023 Split1の時などはみんなが目を見張るくらい良いパフォーマンスを出していました。さきほどエース級のデュエリストが欲しいという話がありましたが、そういう選手になることが出来る可能性を感じています。

mutoに関しては、トライアウトで初めて一緒にプレーしました。日本人としては珍しいくらいタクティカルシューターにおける基礎というものがしっかり出来ている選手です。日本というFPSの歴史が短い国だと、基礎が出来ているプレイヤーというのはなかなか育っていないので、見た時に本当に驚きました。一緒にやっていきたいと思わされた選手です。

Akameに関しては、大会を見ている方々ならご存じの通り、強靱なフィジカルの持ち主です。トライアウトの時からパワーが頭1個抜けているなという感じで、シンプルに強いのでぜひロスターに加わってほしいと思いました。人間性もすばらしくて、ちょっとクレイジーなところもあるんですけど(笑)、他の人を巻き込んでいくエネルギーの強さを感じます。

GangPinは、かなり寡黙な印象ではあるんですけど、すごく落ち着いていて、雰囲気が柔らかいのでGangPinがいるとその場が和む感じがあって、ある意味ムードメーカーというようなところがあります。プレーヤーの技術的な部分では器用なタイプで、なんでもこなせますし、伝えたことをすぐに再現してくれる技量も持ち合わせているので、チームには1人欲しいタイプの、柔軟な良いプレイヤーです。

選手を正しく評価するために模索したトライアウト形式

―― トライアウトにおいて、フィードバックの対応力を見る方式を採用したというKeNNyさんのSNS投稿が大変興味深いものでした。この方式の手応えや、よかった点などお聞きできますか?

KeNNy
今回の再編成時に考案したトライアウト方式は、結構評判が良かったです。

チームとしては、昨年に選手5名が抜けてロスターをゼロから再構築することになった時に、トライアウトに関するノウハウがあまりありませんでした。そこで、コーチのmikkeとFlame、マネージャーの石井とより良い方法を模索していく中で、フィードバックの対応力を見るのはどうかというアイデアが出てきまして、今回採用したという経緯です。

トライアウトで選手の能力を見させていただく際、評価が抽象的で主観的になりがちです。どういうところが良いかという意見がみんなバラバラだったこともあったりして、基準を定めてそれにそって評価をさせていただくというのが、今回の取り組み方法でした。

トライアウトに参加していただいた選手の皆さんにトライアウト後に感想を聞かせていただいたのですが、「REJECTのトライアウトは資料が用意されていたり、評価基準が設けられていたりと、しっかりしている感じがあった」など、うれしい評価をいただきました。

この方法は、今回取り入れて非常によかったと感じています。

REJECTが選手に求める資質

―― 2023年シーズンは、元REJECTのAnthem選手(DetonatioN FocusMe)やAllen選手(SCARZ)が大活躍しました。結果としてREJECTのスカウティング能力の高さを感じましたが、REJECTがプロ選手に期待したり求める資質にはどんなものがあるのでしょうか?

KeNNy
REJECTが求める理想の選手像というものがあります。主体性があり、常に挑戦の志を持ちながら、謙虚かつ誠実であれ、というものです。これを全て網羅するのは難しいとはわかりつつも、いずれはこのような選手になってほしいという期待と理想があるので、加入する全選手にこのことを伝えています。

―― REJECT出身の選手が実績を残しているのは、こういった基準で選ばれた経緯があるからかもしれないですね。Flax選手は、いかがでしょうか。ロスターはそのシーズンを共に戦う運命共同体です。人生がかかった戦いですから、勝てる5人を決めるというのは容易なことではないと思います。選手としてメンバーを決める際に絶対に譲れない点などはありますか?

Flax
自分も主体性と謙虚さが重要だと思っています。ここでいう主体性というのは、技術を継続的に磨いていくために、自分に何が足りないのか考えて行動できるようなことを指しています。主体性がある選手は、自分で管理が出来るようになるので、成長が環境に依存しにくくなります。チームやゲームがすぐに移り変わるeスポーツシーンにおいては、この主体性というのは非常に重要だと考えています。

自分の実力に奢らない謙虚さというのも、同じくらい大事です。いまのVALORANT競技シーンは、いくら一時的に結果を残しても継続的に練習ができないとすぐに周りに追い抜かれてしまうくらいレベルが高くなっているからです。

主体性と謙虚さというのは、技術面だけではなくてチームゲームにおけるチームメイトとの関係性を築くという上でも大切です。言われたことしかやらない人とか、謙虚な姿勢がなく周りをリスペクトできない人は、周りのメンバーから信頼されません。信頼関係が無いと良いチームはできません。

あとは、撃ち合いが強い、バランス的に優れているなど色々なパラメーターがある中で、自分が心から良いプレイヤーだと思えるかというのも気に掛ける部分です。

新チーム最初の出場大会

―― 新チームが最初に登場する大会は決まっていますか?

KeNNy
直近では9月13日(水)から開催される『Red Bull Home Ground』の日本予選に出場します。もちろん、2024年の『VALORANT Challangers』にも出場します。他の大会も、タイミングがあえば積極的に参加していきたい考えです。

―― Flax選手は『Red Bull 5G 2022』のVALORANT 3on3に出場して優勝しました。『Red Bull』主催大会は出場者から非常に評判が高いですが、『Red Bull Home Ground』も期待する部分がありますか?

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Flax
『Red Bull 5G 2022』はステージの見せ方などが本当に素晴らしいと感じました。『Red Bull Home Ground』の日本予選を通過して、両国国技館で行なわれるオフライン本戦まで行くことができたら、また貴重な体験をすることができるに違いないので、すごく期待しています。

―― 新ロスターですでに練習やスクリムを開始しているということですが、現時点での感触はいかがでしょうか?

Flax
自分のキャリアの中ではトップクラスに良い感触を得ています。
みんな元から個体値が高いので、少し戦術の共有をするだけである程度形になってスクリムで勝ててしまうこともあります。自分がIGLとして、コーチがチームとして再現したい戦術も再現率が高いので、昨年以上に良くしていけるのではないかというのが、現状のファーストインプレッションです。

これから良くしていかないといけない部分もまだまだたくさんあります。REJECTはプレシーズンで他のチームよりも早く準備に入ることが出来たので、多く練習できる時間を活かしてチームとしてレベルアップしていきたいです。

―― 現状、他チームも新体制でスクリムが組まれているような状況になっているのでしょうか?

Flax
個人的な印象としては、この8月末にチームメンバー5人が確定して練習に入れているチームはかなり少ないと思います。

常に変化するVALORANT、チームとしてのサポート体制

―― 新マップやエージェントが続々と登場し、マッププール変更・バランス調整などVALORANTの競技シーンは常に変化しています。コーチ・アナリスト陣には見えない苦労が多いと思うのですが、対応はやはり大変でしょうか。

KeNNy
変更内容に応じて、大変と感じる事もあります。直近でもパッチで大きな変更が入ったばかりですが、新マップの追加だったり、マップオブジェクトの変更、大型のバランス調整などが入ってくると、やはり苦労します。1つや2つの調整や変更であれば、そこは柔軟に対応可能ではあります。

新エージェントが出てきたり、エージェントに大幅な修正が入るとゲームメタにも影響がありますので、選手とコーチで時間を掛けて議論する必要が出てきます。特に大会中に変更が入ってきたりすると、そこに対する調整だったり、練習時間も充分に取れなくなってくるので、いかに素早くまとめてわかりやすく選手に落とし込めるかというコーチの力量が問われます。そこに対してすぐに対応できて強いチームというのは、選手も含めてですけど、優秀なコーチがいてこそチームが成り立っているんだなと個人的には感じています。

―― いまREJECTはコーチ3名体制ですが、チームによっては採用を強化しているようなところもあります。コーチというのは、多くいてくれた方が有難いものなのでしょうか?

KeNNy
ケースバイケースかなと思います。
現状のREJECTは3人体制で回せている認識ですが、これが大会を勝ち上がって総当たりのリーグみたいになっていくと、対戦チームを分析するのに時間が足りなくて、リソースが必要だと感じることが出てくる事もあります。

長期展開フォーマットを採用した2024年シーズンについて

―― VCT2024の詳細が発表されました。Challengersは試合の機会がかなり増えて、年間を通じた戦いを行なうことになりました。どのように感じていますか?

Flax
VCT2024はかなり長いシーズンになることが予想されます。長い期間プレー出来るということは、オフシーズンの選手リリースからチームに加入するまでの時間が短くなるので、選手の生活面に関しては2023年シーズンよりも安心できる状態になるのかなと思います。ここはすごく良い部分だと感じています。

選手目線で大変そうだと思う部分としては、シーズンが長くなった中で、良いコンディションを常に保たないといけないところや、休暇や調整に使える時間がかなり少なくなることが予想される点です。

いままで以上にチームや自己の管理、地力の高さが大切となるシーズンになるのではないでしょうか。

―― 選手の貸し出し方式という新しいシステムも発表されました。詳細はまだ不明ですが、このような仕組みはどう感じますか?

KeNNy
様々な選手がパートナーシップチームで活躍出来る可能性があるというのは、すばらしいシステムだと思います。チームを運営する側の立場としては、主力選手が貸し出しになった場合に、どのようにしてその穴を埋めていくかといったところで、苦悩を強いられるのではないかと想像しています。

現状、国内シーンにおいて移籍やトレードに関する明確なルールが存在しません。給与や移籍金の交渉は、暗黙のルールで行なわれている事が多い状況です。この機会に、公式なルールが設けられたらありがたいなと思っています。

Americasの昇格を巡る話題

―― The Guardが2024年のAmericasリーグには出場せず、昇格なしの10チームで実施になることが本日の深夜に発表されて、大きな話題になっています。インターナショナルリーグを目指す選手・チームの運営者としてどのように受け止めましたか?

※補足
インタビュー実施後、判断が撤回され選手達は出場が認められた

Riot Gamesが昇格なしの判断を撤回、元「The Guard」の選手たちが『2024 VALORANT Champions Tour』Americasリーグ出場へ
https://www.negitaku.org/news/n-26021

KeNNy
まず第1は選手やコーチ、そこに関わる全てのスタッフが非常にかわいそうです。何のためにやってきたんだと、絶望していると思います。選手たちに事前に通達されず、SNSで知ったという記事も読みました。この残念な結果を受けて、引退してしまう可能性のある選手もいるのではないかと思うほど衝撃的な出来事です。

REJECTはインターナショナルリーグの初期パートナーチームになるため、スタッフの方々が申請手続きを非常にがんばってきた経緯があります。そのため、参戦するために必要な条件や要項を満たすために、チーム運営側も大変な部分があったのだろうと推測できます。必要な設備を用意したり、資金面の部分だったり、かなりシビアな条件があるので、真相はわかりませんが2024年の出場権を得てから十分な準備・対応が出来ないという判断が下されたのかもしれません。

こういう出来事が起きてしまうと、選手も不信感を持ったり、信頼を失ってしまったりということが発生してしまいます。そのような事が無いように選手達との信頼関係を構築したり、より良いチーム運営をしていかなければならないと感じる出来事でした。

Flax
選手目線としては、非常に精神的につらいものだと思います。

インターナショナルリーグ出場という目標に対して結果を残して、来シーズンに向けて準備を進めていたはずなのに、予期せぬ形で出場が叶わなくなるというのは全く理解できないことだと思います。負けるのとはまた違う辛い感情があると思うので、自分としては選手たちにとって、もっと良い形となる声明が出てくれれば良いなと思います。

2024年シーズンへの意気込み

―― 新チームの目標は、2024年シーズンを勝ち抜いて、2025年のインターナショナルリーグ出場権獲得ということでよいでしょうか?

Flax
インターナショナルリーグの出場権獲得、その先では世界大会に出て結果を残したいという目標があるのですが、まずは国内シーンでの優勝にフォーカスしていきます。

2023年シーズンは、アセンションであと一歩というところまでいった日本チームもいるので、国内で優勝できた時には、インターナショナルリーグの出場権獲得というのもおのずと見えてくると思っています。国内優勝がまず立ちはだかる大きな山だと思うので、ここにしっかりとフォーカスして突破したいと考えています。

KeNNy
まず、新チームとして『Red Bull Home Ground』日本予選の優勝を目指しています。最終的な目標としては、2024年シーズンを勝ち抜いて、2025年にインターナショナルリーグへ昇格参戦して、そこで良い結果を残すことです。

今回、既存メンバー含め本当に優秀な選手たちとご一緒することができて嬉しく思っています。コーチ陣、運営スタッフも含めてすばらしい人材がそろっているのでファンのみなさんの期待にお応え出来るよう挑戦していきます。応援してよかったと思ってもらえるようなチームにしていきたいと思っていますので、応援よろしくお願いいたします。

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この記事を書いた人
Negitaku.org 運営者(2002年より)。Counter-Strikeシリーズ、Dota 2が大好きです。 じゃがいも、誤字脱字を見つけるのが苦手です。

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