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[インタビュー]『SCARZ』VALORANT部門コーチ陣 noppo・Fadezis・Bullcoに聞く2024年新体制

川崎を拠点とするプロeスポーツチーム『SCARZ』のVALORANT部門コーチ陣に、2024年シーズンに向けた新体制について質問させていただきました。

2024年シーズンはコーチ3人体制を採用

新メンバー加入発表ライブ配信アーカイブ

―― Fadezisコーチが続投、Team Jadeiteからnoppo監督、Bullcoコーチが新たに加わりました。それぞれ、SCARZで2024年シーズンに取り組もうと決めた理由を教えてください。

noppo
自分の場合、理由は3つあります。オーナーの友利さんとのご縁、運営のサポート力、そしてFadezisの存在です。

1つ目、友利さんとは長い付き合いで、とても信頼している方です。VALORANTのサービスが開始してから真っ先にコーチのオファーをくれたのが友利さんでした。当初はコーチを行うことを全く考えていなかったため加入に至りませんでしたが、こうして 3年越しにSCARZに加入できることになり、とても嬉しく思っております。

2つ目は、運営のサポートの厚さです。優秀なスタッフの方が揃っており、必要なサポートをすぐに受けることができます。

3つ目は、VCJ 2023 Split 2 で SCARZ を優勝に導いたFadezisコーチの存在です。非常に努力家でチームをまとめる能力があり、一緒にチームで活動してみたいと考えていました。

Bullco
VCJ決勝が終わった後にFadezisと話す機会がありました。すごく頭の回転が早く学べるところがたくさんあると感じる人物で、Fadezisと一緒に仕事をしてみたいという気持ちになりました。幸いなことにFadezisもそう感じてくれたのか、一緒にコーチをやらないかと声をかけてくれてSCARZに入る事を決めました。

Fadezis
自分は、SCARZの人たちが大好きだから!

―― 3人はそれぞれどのような役割を担当するのでしょうか?

noppo
自分は監督としてチーム全体を管理する役割を担っています。コーチ・選手とコミュニケーションを取り、必要に応じて戦術面でもアドバイスを伝えます。Fadezis はメインコーチとして構成や作戦の決定、練習試合のフィードバックを伝えたりしています。Bullco は、主に戦術面で Fadezis のサポートを行っています。

Bullco
Fadezis コーチのサポートをしながら、より良い案を出せるよう2人で密接にコミュニケーションを取っていますね。

―― コーチ陣のコミュニケーションは英語ですか?

Bullco
コーチ陣のコミュニケーション言語は英語ですね。

ロスター決定時に重視するのは?

―― 2023年の好成績に貢献したJemkin選手、Kr1stal選手、TORANECO選手といった有力選手達は、移籍や転身で新たな道へと進みました。彼らが抜けて、新メンバーが発表されました。どのようなチームにしていきたいですか?

Bullco
2024年も、目標はパシフィックリーグ出場です。今いる選手の色を活かしたチーム作りが出来たらいいと思います。

noppo
新たに加入した選手たちと「パワフルさ」と「巧さ」をコンセプトにチームを作り上げていきたいです。

―― ロスターを選ぶ時に、選手に求めるのはどのような能力でしょうか?それぞれの考えを聞かせていただきたいです。

Bullco
トライアウトの段階で色々な選手を見てきました。重視していたのは、「個人判断力」「提案力」「エイム」3つです。

noppo
自分は「フィジカル」「視野の広さ」「コミュニケーション能力」です。総合的に高いことが理想的ですが、何かに長けていても良いと思っています。

――強いチームを作り上げるのに必要な要素は何だと考えますか?色々あるとは思いますが、これと思うものを是非教えてください。

Bullco
自分が一番必要だと思っているのは「選手」「コーチ陣」「スタッフ」の信頼関係です。

noppo
自分の考えとして、コーチとしてまず必要なのは選手を見る目だと思います。VALORANTは特に選手の入れ替えが多いです。継続的に勝つためには、選手の素質を見抜く能力が必要だと考えます。

次にどこに問題があるかを把握できる能力です。チーム活動はうまくいく時より、そうでない時のほうが多いと感じます。チームが不振に陥っている時、様々な要因が考えられます。そのような時に核となる問題をすぐに把握できれば、チームをさらに強くすることができます。あと、お互いのリスペクトは大事だと思います!

―― 日本チームは韓国プレイヤーを採用する場合が多いです。しかし、SCARZは異なるエリアの選手を起用してきました。なぜでしょうか?

Bullco
日本チームが韓国選手を採用する場合が多いのは、ランクマッチなどで強さを知りやすいからだと思います。SCARZとしては、韓国人選手の採用も選択肢に入れています。トライアウトを行った結果、自分たちがベストだと思う選手を選択をしているだけで、国籍にこだわっているわけではありません。

2024年ロスター、各メンバーの採用理由・魅力

―― 今回、新たなメンバーが加わり2024年のロスターが決定しました。各選手を選んだ理由について、それぞれ聞かせていただくことはできますか?

Fadezis
それぞれの理由については他のコーチに任せましょう。選手決定の過程をお話すると、この2ヶ月間、私たちは30人ほどの選手をリストアップして吟味してきました。選ぶ選手の基準もある程度決めていました。選手が有名であるかやこれまでの実績は気にせず、トライアウトのスクリムで見たものだけを重視して選手を決めました。2024年のロスターは、トライアウトでほとんどの基準を満たした優秀な選手たちで構成されています。

Bullco
Lumo:IGLとして能力が高くゲーム外でもリーダシップがありチームを一つにまとめてくれます。練習雰囲気作りもO
Yoshii: 昨年から見せてくれた幅広いピック高いゲームセンスでチームを引っ張ってくれるでしょう。
Allen:色々な提案ができることに加えてモチベーションが高く、サポート能力が高いです。
Tenzou: FNC Leo選手のように、サポートロールながら高いエイム力を見せてくれます。
Tempura:チームの中で一番安定したエイム、各ロールへの高い理解度をもっています。

noppo
Lumo: IGLができ、尚且つフィジカルが強いからです。また、積極的に声だしや声がけができ、雰囲気を良く保とうとすることが見えたからです。知識も豊富です。
Yoshii:フィジカル、視野の広さ、判断力の早さと正確さを持ち合わせているからです。ムードメーカーでもあり、チームの雰囲気を和ませます。
Allen:努力家で成長が著しいからです。色々なロールをこなせる上に、土壇場での強さがあります。コミュニケーション能力も高いです。
Tenzou:圧倒的なフィジカルと判断の良さです。不利な状況でも覆すことができるフィジカルを持っており、選手にとっても心強い存在だと思います。
Tempura:フィジカルの良さと視野の広さ、そして指示が出せる点です。危機的な状況でも、打開する力があります。

―― 各選手について、魅力だと感じる点についても教えていただけますか?

Bullco

Lumo:ムードメーカー
Yoshii:いつもポジティブ
Allen:以外と人見知り
Tenzou:たまに変な事を言うけどかわいい
Tempura:チーム中で一番年上だけどシャイ

noppo
Lumo:情熱的な点です。明るい性格ですが、競技に対しては非常に情熱的です。プレイが良いのはもちろん、ボイスチャットでもチームの士気を高めてくれます。
Yoshii:魅力は性格とプレイスタイルのギャップにあるかと思います。普段はまったりしている性格ですが、試合となると鋭いAIMと素早く的確な判断能力を持っています。
Allen:土壇場での強さが魅力だと思います。スタン状態でも敵を倒したりと、諦めない力が強いので、本番でもそのような強さを見せてくれることを期待しています。
Tenzou:最年少であり、みんなから可愛がられる性格をしています。ゲームとなると頼れる存在になるので、そこが魅力かなと思います。フィジカルが非常に良い選手ですので、大会でもスーパープレイが観れるのではないかなと期待しています。
Tempura:多くのポテンシャルを秘めている選手ですので、どこまで成長できるかという点が魅力かと思います。学ぶ姿勢も素晴らしく、非常に努力家のため、成長が楽しみです。

Fadezis

Yoshiii
Yoshiiiはゲームセンスと動きに優れた若い選手です。チームにポジティブな雰囲気をもたらすこともできます。スクリムで彼のポテンシャルの高さを改めて知りました。私の目標は、彼がもっと安定したプレーをできるようにすることです。

Tenzou
VCJ 2023 Split2の開幕時から注目していた選手です。彼の動き、火力、一瞬の判断はすばらしいですが、まだまだ改善しなければならない部分が多いのも事実です。彼は若く、聞く耳を持ち、学ぶことをいとわないので、もっと時間をかければ、非常に質の高い選手になれると思います。また、とても面白いことを言うので、チームのみんなにとって弟のような存在です。

Allen
Allenとは去年からの付き合いで、よく知っています。Allenの主な課題は、自分で自分の選択肢を狭めてしまうことと、いくつかの動きを恐れてしまうことでした。しかし、彼は正しい選択肢へ進むため、考え方の変化を示してきています。Allenは2023年よりも良い選手になりたいと本当に思っているし、流暢な英語を話せるから、彼が良い選手になるのを手助けするのは簡単なことですよ。

Lumo
Lumoのトライアウトでの強さ、そして取り組む姿勢にはとても感銘を受けました。彼はアイデアを持ってくるし、チームの雰囲気もよくしてくれます。コーチ・スタッフからのフィードバックにすべて耳を傾け、チームのために試合以外のこともたくさんやってくれます。これこそ、私がチームのIGLを探していたときに求めていたものだと感じました。

Tempura
Tempuraはトライアウトでの最大の発見でした。高い個人技、性格の良さ、勤勉さ、学習意欲の高さなど、多くの場面で私たちを感心させてくれました。Tempuraはいつもフィードバックを求めてきます。彼はチームの中で最も経験が浅いですが、もっと時間をかけ、努力し、私たちがコーチングしていけば、急速に成長するでしょう。

コーチに質問できる機会だからこそ、色々聞いてみた

―― 選手について細かく教えていただいて、ありがとうございます。せっかくの機会なので、コーチのみなさんに聞いてみたいと思っていたことを質問させてください。インターナショナルとアセンション、アセンションとチャレンジャーズ、それぞれチームの強さに差は大きくあると感じますか?それとも、あまり変わらないでしょうか?

Bullco
インターナショナルチームには、競技シーンで強い選手たちが集まっています。結果として、個人能力だとインターナショナルチームの所属選手が上かもしれません。しかし、アセンションやチャレンジャーズチームが、チームとしての能力を仕上げた場合には、インターナショナルチームと戦えない事もないと思います。

noppo
アセンションやチャレンジャーズでも、トップチームであれば、インターナショナルのチームとも戦えるレベルではあると感じます。本番ならではの強さという面もあると思いますが、それを抜きにするのであれば、各リージョンのチームのレベルも上がってきていると思います。

考えられる理由としては、インターナショナルに出場しているチームがチャレンジャーズのチームとよく練習試合を行ってくれることです。とても参考になる点が多く、リージョンのレベルを引き上げてくれています。

Fadezis
パシフィックのアセンション上位チームと、インターナショナル中位以下のチームとの差は、非常に小さいものだと思います。

2023年のアセンション上位4チームが、2023年にパシフィックリーグでプレーしていたとしたら、少なくともプレーオフには進出したと思います。
※Bleed Esports、SCARZ、NAOS Esports、BOOM Esportsの4チーム

―― Fadezisコーチに質問です。アセンションでは惜しくも敗れ、インターナショナルリーグまであと一歩でした。何が足りなかったでしょうか?

Fadezis
アセンションのグランドファイナルでは、自分たちのゲームプランと構成が十分ではありませんでした。この1年、私たちが最も優先したのは、カウンター戦略、良好なマイクロコミュニケーション、そして個々のプレーの改善でした。2024年はコーチ陣が充実したので、ゲームプランを練ることに集中したいと思っています。

―― Bullcoコーチにも質問です。Team JadeiteもVCJ Split2決勝に進みましたが、アセンション出場には残念ながら届きませんでした。何が足りなかったでしょうか?

Bullco
自分としては、ゲーム外の管理が上手くいかなかったと思っています。ブートキャンプ中、選手が体調を崩したりする事があり、練習時間を確保できなくなってしまった部分がありました。あの時、自分は練習時間を増やす事しか考えていませんでした。練習と休みのバランスを取ることができていたら、より良い結果になっていたのではないかと思います。

―― Team Jadeiteは昨シーズン、急激に伸びて結果を残しました。すごく効果があったと感じる取り組みはありましたか?もし可能でしたら、教えていただきたいです。

Bullco
Jadeiteでは、定番のエージェント構成にとどまらず、新しい構成も積極的にためしていました。これが良い結果に繋がったと思っています。

noppo
補足すると、ロールの割り当ても上手くいったと思っています。Jadeiteは元々デュエリスト出身者が多く、特に誰をデュエリストとして起用するか悩んでいる時期がありました。各選手のロールの幅、知識、能力を見て、試行錯誤しました。

その結果、ロールの割り当てがうまく行き、最終的には良い結果が残せたと思います。不慣れなロールを担当しなくてはならない選手もいましたが、ものすごい努力で成果を出してくれました。

―― Jemkin選手はSCARZで大活躍して、インターナショナルリーグチームへ移籍しました。彼がすばらしいと思う点について教えてください。

Fadezis
Jemkinは、自分が何をしたいのか、どのようにスペースを取り、どのようにチームにアドバンテージを与えたいのかを心得ているデュエリストです。このようなデュエリストはサポートプレーヤーにとって非常にやりやすいのです。こういった点が評価されているのでしょう。

―― SCARZはVALORANT以外のタイトルも好成績を残しています。SCARZという組織の強みは何だと感じていますか?

Bullco
SCARZに入って間もないですが、勝つためのチームサポートが本当に手厚いと感じています。

Fadezis
SCARZのスタッフは、選手のサポートに全力を尽くし、コーチのビジョンや意見を尊重してくれます。海外のスペシャリストに投資しているようで、それがチームの成績を向上させる新たな分野を見つけるのに役立っているのでしょう。

―― noppoさんに質問です。たくさんのレジェンドがコーチとして活躍しています。レジェンドがコーチとしても活躍できるのはなぜだと思いますか?

noppo
過去の経験がVALORANTでも多く活かせるからだと思います。異なる部分も多いですが、5対5のFPSとしては通じるところも多くあります。

自分が元々IGLを経験していたこともあり、マクロ面での考え方を伝えることができたり、細かい連携のミクロ面なども過去の経験から伝えることができます。元々選手だったこともあり、選手たちの気持ちも分かるという点もあるかと思います。選手経験があるため、現実的な改善案を伝えることができます。

また、チームが不振の時に問題の本質がどこにあるかもすぐに気づくことができます。素質のある選手も見抜けます。もちろん、過去の経験だけに頼らず、自分でもプレイしたり、トップチームの試合を観て研究したりと努力もしています。

それと VALORANTリードゲームデザイナーのVolcano氏が、過去に自分と同じタイトルでプロゲーマーをしていたというのも、もしかしたら関係しているかもしれません。

2024年シーズンに向けて

―― 2024年シーズンは、これまでよりも長期間での実施になります。どのようなことが大変になりそうでしょうか?

Bullco
練習と休みのバランスを取ることが一番難しそうだと感じています。練習時間を増やしながら、選手のパフォーマンスを最大に出せる事が出来るようにサポートしていきたいと思います。

noppo
体調とメンタルの管理に気を付ける必要があると思います。長期間を走り切れるように、スケジュール管理を徹底し、最後まで万全のコンディションで駆け抜けられるようにしていきたいです。

―― 11月に『Red Bull Home Ground』が控えています。国際的なチームも出場しますが、どのように挑んでいきたいと考えているでしょうか?

Bullco
世界トップチームたちと対戦できる貴重な機会だと思っています。この機会を無駄にせず、良い経験にしていけるようにがんばります。

Fadezis
『Red Bull Home Ground』は、LANの経験を積み、世界のトップチームと戦う良い機会です。プレッシャーを感じることなく、世界トップクラスのチームをどこまで追い詰められるかを目標にプレーしたいと考えています。

noppo
強豪チーム揃いですが、優勝目指して大会に挑んでいきたいと思います。応援よろしくお願いします!

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この記事を書いた人
Negitaku.org 運営者(2002年より)。Counter-Strikeシリーズ、Dota 2が大好きです。 じゃがいも、誤字脱字を見つけるのが苦手です。

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