『eスポーツジャパンカップ』を主催する筧 誠一郎氏にインタビュー、ゲーマーが評価される仕組みとしてプロゲームリーグ設立を目指す

LG CINEMA 3D Presents 第 3 回 eスポーツ JAPAN CUP

eスポーツジャパンカップ』を主催する日本 eスポーツエージェンシー株式会社代表の 筧 誠一郎氏にインタビューを行なってきました。

『eスポーツジャパンカップ』を主催する筧 誠一郎氏にインタビュー

『eスポーツジャパンカップ』は、数年後のプロゲームリーグの設立を目指し、継続的な開催を行なっている大会です。採用タイトルは「StarcraftII」「鉄拳6」「FIFA12」。これまでに 2 回が開催され、2012 年 9 月 15 ~ 16 日には第 3 回大会が行なわれる予定となっています。

こちらの大会について、個人的に思うことがあったり、そもそもどういうことで始まったものなのかを知りたかったりということもあって、代表の筧さんにお話を聞く機会を作っていただきました。

『eスポーツ』との出会いと、それを広めようというモチベーション

まずは、「eスポーツジャパンカップ」を運営する「日本 eスポーツエージェンシー株式会社」とはどのような目的で設立された会社なのか、そしてこの会社を立ち上げた筧さんとはどんな方なのかを教えてください。

筧 誠一郎氏
筧: すでにご存じの方もいらっしゃると思いますが、以前は広告代理店の電通に勤めていまして、そこで『日本 eスポーツ協会』の設立を目指す『日本 eスポーツ協会 設立準備委員会』のメンバーとして活動していました。

その後、『eスポーツ』の普及に人生をかけて取り組みたいという思いから電通を退職し、2011 年 9 月に「日本 eスポーツエージェンシー株式会社」を立ち上げました。
この会社のミッションは、日本に「プロゲームリーグ」を誕生させることです。
「プロゲームリーグ」を誕生させたいのは、一生懸命にゲームに取り組むプレーヤーが最終的に評価される仕組みを作りたいからです。

そのための第一歩として、地域密着のフランチャイズチームによる対抗戦である「eスポーツジャパンカップ」を定期的に開催し、目標の実現に向けて突き進んでいるところです。

ご説明いただいたとおり、筧さんは「日本 eスポーツエージェンシー株式会社」を設立され、日本にプロゲームリーグを誕生させることを目標に「eスポーツジャパンカップ」という地域チーム参加型の大会を定期的に開催されています。そもそも、筧さんは『eスポーツ』とどのようにして出会ったのでしょうか?

筧 誠一郎氏
筧: 『eスポーツ』は 5 ~ 6 年前に以前務めていた電通の社内講演会で知りました。

当時、僕はスーパーファミコンやプレイステーションでゲーム開発のスーパーバイザーを担当したり、プライベートでオンラインゲームの「リネージュ」プレーしていてゲームにそれなりの見識があったため、社内講演会で講師を担当することになったのです。

この時、韓国から来ていた留学生も講師になっていまして、彼が『eスポーツ』についての講演を行なったのです。これを聞いた時に、僕はとてつもない衝撃を受けました。「どうしてこの『eスポーツ』が日本ではムーブメントになっていないんだ!」と思って、早速ネットで検索するなどして勉強を開始し、この分野について研究しなければならないと確信しました。

そして、すぐに社内で『eスポーツ』の研究会を立ち上げました。
いろいろと調べていたところ、社内にかつてプロゲームチームを運営していたという竹田恒昭君が在籍していることがわかりました。彼を含めて新しいもの好きな社員を集めて、最終的には 20 人ほどのチームが出来上がりました。

そのチームで、『日本 eスポーツ協会』の設立を目指す『日本 eスポーツ協会 設立準備委員会』を立ち上げることととなり、電通以外の会社さんにも協力を求め、『eスポーツ日韓戦』の実施、『日本 eスポーツ学会』の設立、学生を主体とした『eスポーツ学生選手権』といった取り組みを行なってきました。

社内の講演会がきっかけに、ものすごい展開を見せて実現したのがあのプロジェクトだったのですね。それからいままで『eスポーツ』について取り組んでいるわけですが、筧さんの『eスポーツ』を世の中に広めていきたいというモチベーションはどこからきているのでしょうか?

筧: 自分が小学生や中学生の頃を思い浮かべていただきたいのですが、「何かが上手い」子供はヒーローで、その子の周りにはたくさんの友達が集まっていたと思います。

それは「サッカー」「野球」でもそうですし、もちろん「ゲーム」でもそうです。「格闘ゲームで対戦しても○○君には勝てない、すごい」とか。

それぞれを見ていくと、サッカーがうまい A 君は「高校で国立の大会に出るらしい」「ユースチームに入るんだって」「J リーグチームに入ってプロになったね!」ということで尊敬されていきます。野球もしかりで、B 君は「今度の甲子園に出るんだって」「プロ野球のスカウトが試合を見にきていたそうだよ」と、スポーツを極めれば極めるほど尊敬される存在になっていきます。

でも、これがゲームになると「C 君はゲームの全国大会で優勝したんだって」「そうなんだ」「ゲームをそんなにやって将来的に意味あるの?」「オタクじゃん」ということになってしまう。

かつては同じヒーローだったのに、どうしてゲームだけこんなことになってしまうのか。
それは、野球には「プロ野球」、サッカーには「J リーグ」という活動が認められることにつながる最終的な出口がありますが、ゲームにはそれが無いないからです。

そのような状況をみて、僕は一生懸命にゲームをやっている人が賞賛される仕組みを作らなくてはならないと思いました。

Johnathan "Fatal1ty" Wendel

Jonathan “Fatal1ty” Wendel 氏

例えば、海外では Jonathan “Fatal1ty” Wendel さんという、年間 1 億円以上を稼いた実績を持ち、尊敬を集めるプロゲーマーがいる。でも、当時日本にはそのような選手は存在せず、じくじたる思いがありました。

僕がなんとかして『eスポーツ』を広めていきたいと思ったときに、日本では様々な『eスポーツ』大会を開催されている方々がいました。それぞれ拝見したところ、それらは『eスポーツ』ファンに向けて開催されている大会でした。

僕は、『eスポーツ』に取り組む人達が J リーガーのように周りから尊敬・賞賛されるようにしたいと思っています。おじいちゃんおばあちゃんまではいかなくとも、子供からご両親くらいまではそれがすばらしいものであると思って欲しいと。

ですので、『eスポーツ』ファンだけでなく、一般の方も興味を持ち応援してもらえるような仕組みとして、J リーグのような地域ベースの「プロゲームリーグ」を作りたいと思ったのです。

「プロゲームリーグ」を実現するには?

日本で「プロゲームリーグ」開催を実現するためには何が必要なのでしょうか。例えば、このような組織が必要とか、運営資金としていくら必要とか。どうなったら実現される、というのがわかるとゲームコミュニティ的に応援のしがいもあるのかなと思います。

筧: サッカーの「J リーグ」を例として説明しますと、たとえばスタジアムを持っていること、とか黒字経営を実現出来ているか、などさまざまな規定があります。

J リーグのチームを年間運用するとなると、二桁億円くらいのお金がかかります。
『eスポーツ』のプロチームの場合だと、サッカースタジアムのような大がかりな施設を持たなくてよいですから、費用的には 100 分の 1 くらいになるのではないかと試算しています。数千万円規模の運営費用ということですね。

J リーグのチームは、活動する地域でそれぞれスポンサーやメディアパートナーを獲得して、そこからのスポンサード資金を元に運営されています。さらに、ファンクラブやホームゲームの入場チケットなどからも収入があります。

チームがある地域の地方局にとって、地元チームの試合中継というのは安定して高視聴率をたたき出せる非常に重要なコンテンツになっています。このようなそれぞれの相乗効果を、『eスポーツ』のプロチームでも実現していけるのではないかと思っています。

そのようなことが実現された場合に、「eスポーツエージェンシー株式会社」の将来的な立ち位置はどうなるのでしょうか。現在のように大会の主催・運営も行なっていくのでしょうか。

筧: 私たちは、最終的にプロゲームリーグを統括する機構となることを目指しています。
例えば、アメリカのアイスホッケーではサラリーキャップ制度を取り入れて、莫大な資金を持つチームが有力選手を集めて有利にシーズンを展開するというようなことを規制する仕組みが導入されています。

そのような、ゲームを平等にしてファンが楽しめるリーグ作りをしていける組織になれたらと思っています。

個人的な仕事の関係で、野球やサッカーほどメジャーではない、とあるプロスポーツリーグの運営会社さんと仕事をさせていただいたことがあります。こういったら失礼ですが、社会的に野球やサッカーほどメジャーな認知度があるスポーツではないので、その規模についてそれほど大きなものではないのだろうな、と思っていたのですが、実際にオフィスを訪れるとものすごい規模、そして大変多くの人が関与されていました。僕はプロゲーマーというものに興味を持っているので、プロゲームリーグが仮に誕生するとなった場合にこのような規模を実現出来るのかな、と考えたらかなり厳しいのではと思わされました。筧さんは J リーグ等の成り立ちにもお詳しいと思いますが、そのあたりについてどう考えられているのでしょうか。

(実際にどのスポーツの話か説明して)はい、まさにおっしゃられる通りで、そのプロスポーツはとてつもない規模で運営されています。プロスポーツリーグを運営するというのは本当に大変なことです。

大変であるのは認識していますが、さまざまなプロゲームリーグの成り立ちを見てきていますのでこのようなところで問題が発生するとか、こうするとうまくいく、というような事例についてのノウハウを得られています。それらを参考に、私たちは成功を目指してトライしていきたいと思っています。

「eスポーツジャパンカップ」は「J リーグ」のような地域フランチャイズ制を導入していくとご説明いただきました。この方式を採用しようと思ったのはなぜでしょうか。

筧: 『eスポーツ』を普及させるための展開として、まずは定期的な大会か開催が不可欠だと思いました。ただ開催するのではなく、これを産業にしなくてはならないと思っています。

筧 誠一郎氏
それを実現するにはどうしたら良いか、ということを考えると現在成功している「J リーグ方式を参考にしていくのが良いだろうということに行き着きました。

例えとして韓国のプロゲームリーグ事情を見ると、これまで「Starcraft」のプレーヤー達は「新韓銀行プロゲームリーグ」をメインに活動していました。しかし、「Starcraft」の続編が出たり、大会のライセンス問題があってまともに活動することが出来ない状態が発生してしまいました。こうなると、プレーヤーはそのリーグで活動していくことが非常に難しい状態になってしまいます。

これを回避するためには、J リーグのように地域チームを応援するということでタイトルに依存しない形でチームが応援され、活動していけるような状態にすることが必要だと思っています。

地域でプレーしているプレーヤー達がいて、それをスポンサーやサポーター達が応援し支援していく。プレーヤーは、サポーターやスポンサーの応援に応えるためにがんばっていく、という構造を目指したいですね。

「eスポーツジャパンカップ」の場合ですと、e-DOGS 千葉が一番進んでいる状態で、このチームは「e-Sports SQUARE」という活動拠点を持っており、所属選手をスタッフとして雇用しています。ここを拠点に、ファンがゲームを教えてもらいに来たり、活動を応援したりというような流れを作ることを目指しています。

現在、観客視点から感じる「eスポーツジャパンカップ」の構造について

以前ご意見させていただきましたが、現在の「eスポーツジャパンカップ」はフランチャイズ制を取り入れて展開されていますが、観客がチームを応援するというスキームを想定しているにもかかわらず、各チームの活動が全くといっていいほどわからない状況だと思います。チームの公式サイトは大会の告知と報告だけですし、プレーヤーの方は「eスポーツジャパンカップ」以外の大会でチーム所属プレーヤーとして活動しているわけでもありません。ですので、観客側からするとストーリーを感じられないですし、個人的に知り合いの選手を応援するということはあると思いますが、チームを応援するには材料が少ないと思います。いまお話いただいた、e-DOGS 千葉の事例などが各チームの公式サイトで公開されていると非常に良いと思うのですが。

筧 誠一郎氏
筧: それはごもっともなご意見だと思います。大変もうしわけないのですが、そういう取り組みについてはいまのところ力が及んでいません。
e-DOGS 千葉以外の各チームを運営されている会社さんは、本業の合間に少ない人手で運営されているので、全てのことまでは手が回っていません。

このあたりは僕たちもご協力していくつもりで、公式のニコニコ生放送チャンネルを作ってそちらで各チームのプレーヤーに登場いただき、インタビューをするなどして選手やチームを応援していただけるような流れを作っていきたいと思います。

チームの活動についてはうまく発信が出来ていない状態なのですが、実際は各チームがさまざまな活動をされています。例えば、前回大会で王者となった GAMES 沖縄は、飲食店の一角に eスポーツ練習場として FIFA をプレーできる環境を構築しています。こちらで現地の若いプレーヤーさん達が『eスポーツ』の普及に向けて取り組んでいます。

GAMES 沖縄
GAMES 沖縄の第 3 回大会 FIFA 代表選手は、彼らが現地で主催する予選を勝ち抜いたプレーヤーになる予定です。第 4 回大会では、さらに鉄拳予選を実施して現地から選手を本戦に送り込むという計画になっています。沖縄チームは、できる限り沖縄の選手でメンバーを構成して、チーム、選手、サポーター地元沖縄をキーワードに地域一体となって盛り上げていくという展開を望んでいます。

そのために、若いプレーヤー達が積極的な動きをしてくれているのをうれしく思っています。このような取り組みを、もっとみなさんに理解していただける展開が出来るようがんばりたいと思います。

そういう活動が行なわれている、というお話はすごくおもしろいですね。各チームがそのような活動を伝えていけるようになると、大会に興味を持つ人が増えてくると思います。

筧: そうですね。この部分はいまではまだまだな状況ですが、観客のみなさんに楽しんで頂けるよう、チームや選手の紹介等をしっかりやっていける体制作りを目指しがんばります。

もう 1 つ、僕が「eスポーツジャパンカップ」について思っていることがあります。eスポーツイベントは「運営者」「スポンサー」「メディア」「プレーヤー」「観客」で構成されていると思います。これまでの「eスポーツジャパンカップ」は、「運営者」「スポンサー」「メディア」「プレーヤー」で盛り上がっていて、「観客」は蚊帳の外という印象を受けました。それは、さきほどの件のように、チームのことをよく知らないのでチームを応援しにくいということもありますし、いきなり「プロゲームリーグ誕生を目指す」「ジャパンカップ」「大手企業が協賛」ということで距離を感じたり、「テレビ番組」があるからそちらに向いた展開という印象もあります。

筧: まず、なぜ初回から「eスポーツジャパンカップ」に大きなスポンサーさんがついたかということを説明させてください。

第 1 回大会について
第 1 回大会
「eスポーツジャパンカップ」を企画している当初は、渋谷のクラブ等を会場として LAN パーティ形式で開催しようと考えていました。2011 年の 8 月頃に、前職の後輩から LGエレクトロニクスさんがゲームのイベントで取り組みをしていきたいという案件があり、ゲームに詳しいということで僕に相談がありました。ちょうど「eスポーツジャパンカップ」を企画しているという事で、お話をさせていただくことになりました。

実際にお会いしてみると、LG さんは韓国企業ということもあり eスポーツシーンについてよくご存知した。韓国とは違う形かもしれないですが、日本でも eスポーツが盛り上がってほしいということで、こちらが予想していた以上の予算を組んでくださいました。

その期待に応えるために、当初の企画よりも大きな会場を用意し、有名ゲーマーや著名人のゲストをお呼びしたりした結果、エンターテイメント性が高い大会になりました。

ちょっとしたエピソードですが、LG さんは大会のストリーム視聴者数が有名な格闘ゲームイベントの『GODSGARDEN』さん規模(20~30 万人)はいくと期待されていたそうです。

それを聞いた時は青ざめてしまいまして、僕たちは初めて大会をやるわけですしそんな規模はとても無理ですと説明しまして、「それでは 2 万を目指しましょう」となんとかハードルを下げていただきました。でも、僕らからするとそれでも途方もない数値でした。結果として、関係者の告知協力やプロゲームリーグ設立を目指す大会ということで注目いただき、78,000 という視聴者数となりました。LG さんにはこの結果を大変喜んでいただいて、次回の第 3 回大会で再びスポンサーとなっていただくことが決定しています。

第 2 回大会について

第 2 回大会
JINS さんのケースも説明しますと、こちらはスタッフがスポンサーの獲得営業をした結果ご縁があったというものです。それこそ、200 や 300 といった会社さんに電話をかけてお話をさせていただけないかと営業するわけですが、会ってもらえるのはそのうち 20 社くらいあれば良い方です。その中で、お話をさせていただいた JINS さんが PC 用メガネを展開されており、さらにゲーマー向けの『JINS PC for HACKERS』の企画が進行中で親和性があるだろうということで協賛をいただけることになりました。

結果として限定 1,500 本で販売された『JINS PC for HACKERS』が 1 日で完売というという記録になりました。これには「eスポーツジャパンカップ」も貢献できたのでは無いかと思っています。

そういう経緯での開催だったのですね。やはり、さきほど言ったような現在の構造に関する印象が僕にはあるのですが。

筧: ご指摘いただいたとおり、「チーム」や「プレーヤー」の活動が見えにくい状況から、「スポンサー」や「メディア」に向いているように見えてしまっているというのは良くない構造です。先にお話しましたとおり、公式のストリーミング番組を実施したりチームからの発信などを強化していくことによって、構造のバランスを取っていきたいと思います。

有名人をゲストに呼んだり、テレビ放送メディアを入れたりという eスポーツ大会はこれまではほとんど無いと思いますので、「そんなものは eスポーツに必要ない」というご意見もあるかと思います。

しかし、僕たちがやっている「eスポーツジャパンカップ」は、『eスポーツ』というものを世に広めていくための大会です。ですので、ゲームメディアさん以外の媒体さんにも取り扱っていただけるよう、エンターテイメント的な要素を入れます。多くの人に知っていただくためには何でもやります。

最終的には、みんなが楽しめるものを作るという情熱でやっています。

いろいろとご説明いただいたおかげで、どうして現状のような形になっているのか良くわかりました。これを読んだ方にも合点がいく方が多いのではないかと思います。

こういうことをお話する機会をもっと早く作れたら良かったのですが、大会を 3 ヶ月スパンで開催するということもありドタバタでなかなか実現出来ませんでした。疑問やご意見があれば、どんなことでも構わないのでいただけたらと思います。

フランチャイズチームの参加経緯や、今後の展開について

「eスポーツジャパンカップ」に参加されているフランチャイズチームはどんな経緯で参加されているのでしょうか。

筧: そうですね、お話するのが難しいケースもあるので当たり障りのないところで。

まず、eスポーツのプロゲームリーグ設立を目指してフランチャイズチームを作りませんか、というお話を各企業さんにさせていただくところから始めました。

そこでの説明の中で必ず「いまは一銭も収益になりません、立ち上がってもしばらくは収益になるかもわかりません。収入が入るには 3 年以上かかるかもしれません。」ということを言います。大変リスクがあることですが、どんな協力も惜しまないので一緒にやっていきましょうと。僕も、本気で取り組んでいただける方とだけやっていきたいという思いがあるのでそこにコミットいただけない場合は、提案したにも関わらずお断りすることもあります。

電通をわざわざ辞めてまで取り組んでいることを提案しにきているのだから、きっと儲かる話に違いない、と思われていると思うので、この話を聞くと大体ポカーンとされてしまいますね。

ですから、こんな無理な要望に賛同して共にプロゲームリーグ実現を目指すことを決めてくれた 5 チームにはとても感謝しています。彼らや未来のパートナーとスクラムを組んで、プロゲームリーグ実現に取り組んでいきます。

収益化するまで 3 年はかかるかもしれない、というお話がありましたが確かにプロゲームリーグがそうそう簡単に出来るとも思えません。「eスポーツジャパンカップ」を定期開催することで実績を積み重ねていくということになると思いますが、こちらの大会は資金的にいつ頃までの開催は確定しているのでしょうか。

筧 誠一郎氏
筧: 2013 年大会まではどんなことがあっても確実に開催します。
もしかすると規模は小さくなっているかもしれないですが、そんなことになっていたら、「それでもがんばっているな」と思って応援して欲しいです(笑)

参加チームはだんだんと増やしていくつもりです。
J リーグは 10 チームからスタートしました。僕らも、全国の各エリアをカバーする形でそのくらいの数でプロゲームリーグを始動できたらと考えています。

NHK の中谷日出 解説委員は eスポーツを積極的に紹介されているのですが、「eスポーツが普及することでゲームに対する偏見が解消され、その結果日本の未来が絶対に明るくなる」ということをおっしゃっていました。

そのような未来を作るためにも、まずは出来るだけ継続して大会を開催していきたいですね。

「eスポーツジャパンカップ」や「プロゲームリーグ」に FPS は採用されるのか?

これは是非聞いておきたいことなのですが、「eスポーツジャパンカップ」や「プロゲームリーグ」に FPS タイトルが採用される予定はあるのでしょうか。

筧: FPS は eスポーツにおいて重要な競技であると認識しています。
これまでに「QUAKE」シリーズや「Counter-Strike」シリーズを代表として世界中で数々のドラマが生まれてきました。

Counter-Strike
ただ、国内で大会を子供からお父さんお母さんまで知っていただくということを目標に露出展開を行なっていった時に、FPS は見せた瞬間に批判があるというのは避けられないだろうと思っています。

eスポーツや FPS を理解している人には何の問題も無いのですが、世間的に見るとやはりそうではありません。何かの事件が発生した時に、容疑者が FPS をプレーしていたとなるとメディアが格好のネタということで想定以上の取り扱いをされてしまう。
「eスポーツジャパンカップ」や「プロゲームリーグ」では FPS というものを大々的に取り上げ犯罪を助長しているというような。

そのような理由から、「eスポーツジャパンカップ」というプロゲームリーグの設立を目指す大会においては、いまのところFPSタイトルを採用する予定はありません。

しかし、「eスポーツジャパンカップ」という枠組み以外のところでは大会やコミュニティに協力していきたいと思っています。「e-Sports SQUARE」でも「SPECIAL FORCE」が公式タイトルになっていますし、オフラインイベントの会場としてもご利用いただいています。

先日、「eスポーツ学生選手権」を見に行ったのですが、「Alliance of Valiant Arms」部門で選手達がチームプレーで盛り上がっているのを見て、やはりすばらしいと思いました。

僕たちにご協力できることがありましたら、是非お声がけください。

『日本 eスポーツ協会 設立準備委員会』の現状は?

気になっている点があるので話を一気に戻させていただきますが、さきほど『日本 eスポーツ協会 設立準備委員会』のお話が出来ました。僕は様々な『日本 eスポーツ協会 設立準備委員会』のイベントを取材させていただきましたが、2009 年に行なわれた『日本 eスポーツ協会設立準備委員会 2009 年度中間報告会』を最後に、活動停止状態となっていると思います。『日本 eスポーツ協会 設立準備委員会』は、現在どういう状況なのでしょうか?

日本 eスポーツ協会 設立準備委員会
筧: 僕は『日本 eスポーツ協会 設立準備委員会』のメンバーでしたが、現在は電通を退職してしまっているということもあり、申し訳ないのですその実情について詳しいことをお話することは出来ません。ただ、感じておられるとおり事実上の活動停止状態というのが正しい現状です。

過去にも実例がありましたが、現在も『eスポーツ』をオリンピック競技にしようという流れがあります。特に、中国がこの動きに対して意欲的です。

僕は、将来的に『オリンピック』や過去に『eスポーツ』が種目として採用され、アジアオリンピック評議会が主催した『アジア室内競技大会』といった大会に日本選手を参加させたいという思いがあります。そのためには、JOC の規定等の関係で代表選手を送り出すためには『日本 eスポーツ協会』の存在が不可欠になります。

ですので、いまのところ詳しいことはお話出来ませんが、『日本 eスポーツ協会 設立準備委員会』の再始動についてもいろいろと動いているところです。この点については、お話出来る段階になりましたら是非ご紹介いただきたいと思っています。

第 3 回大会の見どころとメッセージ

そろそろまとめに入らないといけない時間になってきましたね。 9 月に開催される『LG CINEMA 3D Presents 第 3 回 eスポーツ JAPAN CUP』の見どころなどについて教えてください。

第3回大会
筧: 第 3 回大会の大きなトピックとして、新たなチーム「戸田サイコロティクス」が参加となります。こちらのチームは、これまでに世界的なeスポーツ大会の日本予選をプロデュースしてきた犬飼博士さんが携わっています(さらに、世界的に有名なプロ格闘ゲーマーの板橋ザンギエフさんが監督に就任したことが発表されました)。

これにより、大会ルールが若干変更になり、5 チームの総当たり戦を行ない、成績上位 2 チームが優勝決定戦を行なうことにしました。直接対決で優勝が決定するのでよりわかりやすい形になったと思います。

今後もチームが増えていく予定なので、ルールもやり方も変わっていくでしょう。
例えば、5 チームずつに分れて予選を行ない、各予選グループの上位で決定戦とか。

蝶野正洋さん
ちょっと変わったエピソードをご紹介しましょう。格闘ゲーム部門 総合プロデューサーの蝶野正洋さんはドイツに親族がいらっしゃって、そこのお子さん達が『eスポーツ』をされているんですね。蝶野さんはこれまでは単に「ゲームをやっているんだな」思っていたそうなのですが、いろいろと話を聞いていくと「彼らがやってたのは eスポーツだったのか!」ということで衝撃を受けたそうです。

それでドイツのeスポーツシーンについての知識があったり、ご自身がプロの格闘家ということもあって、第 1 回の大会アドバイザーという形ではなく、第 2 回大会からは総合プロデューサーということで、格闘部門の演出等を行なっていただいています。単なる広告塔というわけではありません。格闘部門は、そんな知識を持ってご覧頂くと違った見え方がして面白いかもしれません。

『LG CINEMA 3D Presents 第 3 回 eスポーツ JAPAN CUP』は 9 月 15 日(日)~16 日に原宿クエストホールで開催となります。現地で熱い戦いを生で見て、ものすごい興奮を味わっていただきたいですね。遠くてそれは難しいという方も、ネット中継や後の CS 放送でお楽しみいただきたいと思います。

今日は本当にたくさんのことをお話いただいてありがとうございました。最後のまとめとしてメッセージ的なものをいただけたらと思います。

筧: 僕らはゲームをスポーツマンシップにのっとり競争していく『eスポーツ』というシーンを社会的に認知してもらえる存在とするためにもっと盛り上げていきたいと思っています。

そのためには、どのようなご意見も歓迎で、それをできる限り吸収して大会に反映していきたいと思っています。

是非大会をご覧いただいて、ご意見、ご感想をお寄せください。それも『eスポーツ』を盛り上げる活動の 1 つであると思います。

みなさま、今後ともよろしくお願いいたします。

――――

いかがでしたでしょうか。
当日は失礼とも取れることや、突っ込んだところについての質問もさせていただいたのですが、真摯に回答いただけて恐縮でした。

個人的に気になっていた部分についての、実際のところのお話が聞けたので今回の場を作っていただいてよかったと思います。

今回の記事を読んで、もしさらに思うことなどがあればコメントに書き込みをしていただけたらと思います。筧さんもご覧になると思うので、それが今後の展開に反映されていくかもしれません。

筧さん、貴重なお時間をいただきありがとうございました。

参考

コメント

MamE

NO,FPS NO,LIFE
せっかくメディアにも注目されてスポンサーもついてて、FPSってこんなに素晴しいんですよ!!プロリーグに参加してるFPSプレイヤーを見て下さい!!ってアピール出来るチャンスなのに、結局世間ウケが悪いから今のところFPSは採用しません…っていつになったらその偏見はなくなるんでしょうね。esportsを標榜する組織ですらこれですから多分なくならないですね。残念です。

Hubble

どんなにFPSに批判的な両親でもFatal1tyのように大会に呼んで優勝してみせれば態度は一変するはず

JXL

yossyさんの指摘に対する回答としては微妙。
結局、配信とか一応頑張るけどe-sportsで売っていくためにスポンサー・メディア向けにやってくけど我慢しろよ、ってスタンスに読める。
まぁ期待してないけど、適当に頑張って。儲かるといいね。

execut1ve

この人達は韓国のe-sportsシーンを参考にしているようですけど
メインでe-sportsが行われているのは欧米の話ですし
ESLやESEAすら知らなそうな気がしますね
一度Dreamhackにでも出向いてみてはどうでしょうか

あと「ローカルから」という意味を取り違えてる感じがします。
インターネット上の話なのですから地域ごととか関係ないですね。

MamEさんの言うとおりで、ゲームに対する偏見をなくすために活動されているのにもかかわらず、
世間受けのいい無難なタイトルだけでやっていって何か意味があるのかなぁと。
矛盾してますよね。やってることが胡散臭い。

ところでGEAIMはどうなったんですかね・・・

giriamu

実家にいたときは、母親・父親に「また人殺しのゲームしてるの?やめなさい」と何十回、何百回と言われました。私の親だけでなく、日本の多数の人がただの人殺しゲームだと思っている人が、日本にはたくさんいると思うから、日本でのFPSのプロリーグは難しいと思う。

jλcks

>>何かの事件が発生した時に、容疑者が FPS をプレーしていたとなるとメディアが格好のネタということで想定以上の取り扱いをされてしまう。
「eスポーツジャパンカップ」や「プロゲームリーグ」では FPS というものを大々的に取り上げ犯罪を助長しているというような。
そのような理由から、「eスポーツジャパンカップ」というプロゲームリーグの設立を目指す大会においては、いまのところFPSタイトルを採用する予定はありません。

こんなん詭弁やろ…
FPSは日本じゃ他のジャンルに比べてそんな人気ないし客得られないからって素直に言えば良いじゃん。

GuangDa

なぜ海外ではFPSは人殺しのゲームではなくe-sportsとして捉えられ、盛り上がることができたのかな。
ブラジルでは一時、殺人が起こる一因とされて法律でネカフェ等でのCS禁止令が出た程だけど盛り上がってるってのに。
うまい話にしか乗らないタイプか。よくわかった。

エージェント弥七

JAPAN CUP採用タイトルはどれも1vs1ですけど、爆破ルール5vs5のFPSはチームワークが肝なので、そういうところも見て欲しいですね。確かにもったいない。

でも、JAPAN CUPには、e-Sportsを知らない人に見せるという明確な目標があるから(そういう試みはこれまでほとんどなかったかも)、FPSが外されるのは仕方ないと思います。
仮に、FPSでもやれば人は集まると思うけど、集まるタイトルとなるとA.V.Aになっちゃうよね。少なくともCS1.6/CS:GOではない。

あと、FPSに対する偏見を覆すのは本来はJAPAN CUPの役割じゃなくて、プレイヤーの責任じゃないの? 何甘えてんの。

MamE

別にCSが採用されてないからとか、他のゲームに対する僻みとかではないですよ。どうせ今からCS1.6採用したってAECの参加チームを見てもらえればわかると思いますが、到底収益の出るものではないし、CS:GOは出たばっかりで、まだ未知数ですしね。だからAVAやSF2、CFとかでもいいんです。Quake系のゲームを批判するわけではありませんが、チーム戦形式のFPSは観客に対するアプローチさえしっかりしていれば、チームの為に貢献するというプレイが見ていてとてもおもしろいです。

プレイヤー一人ひとりの責任は大事ですし、塵も積もれば山となります。がそれには膨大なお金と時間がかかります。そして多くのプレイヤーはそれを目的にプレイはしていません。

ただ、eスポーツジャパンカップはメディアからの注目があって、スポンサーもついてるチャンスでしょう?
>先日、「eスポーツ学生選手権」を見に行ったのですが、「Alliance of Valiant Arms」部門で選手達がチームプレーで盛り上がっているのを見て、やはりすばらしいと思いました。
とFPSに対して答えているのに、なんでそれを伝えようとせずに、世間の意見に同調してるのか不思議です。

当然収益を出して、継続させるというのが会社の基本ですし、それはわかります。わかりますが、個人レベルでどうこう出来るものじゃないですよねこれって。

jλcks

なんでいきなり「csが」になってるのか意味わからんw
誰が何時csの話したんだよw

そしてFPSに対する偏見を覆すのはプレイヤーよりも何よりも
商品を売ってる企業側の責任だと思うんだけど

なんか色々と勘違いしとるのうw

mishima2006

数年前に行われていた取り組みなどの懐かしい話を改めて聞いたような部分も多かったです。
今現在はFatal1tyみたいなプレイヤーもいないですし、プロリーグの話も含めてもうだいぶ過去の話という感じがします。

それは置いておいて、今までで成功した取り組みというのはJAPAN CUPの第1回然り、WCGの5年以上前の大会なんかもそうですけど、
大抵スポンサーが大盤振る舞いだった場合なので。
皮肉にも今非常に関係の悪い国、韓国のサムスンやLGなどの業績が悪くならないことを祈りつつ、
最低限JAPAN CUPは視聴数などで結果を出していくことが重要だと思います。
ただ、その先の話で売上げを上げていくとかになると、個人的にはとても現実的には思えないですが…。

まぁ、結果を出すためにはCSだ、FPSだという話はもはや論外で、人気のあるゲームをやらないとだめだと思うし。
残念ながらこれもまた皮肉で、私らeスポーツファンが好きなFPSはだめっていう、なんとも虚しいことなんですけど。

私個人としてはFPSについては諦めの気持ちも持ちつつ、今後のeスポーツの発展と、日本のための健全な青少年の育成を
願うばかりです。

habanero

ゲームのジャンルはどうでもよく、まずはe-Sportsという産業を興すところから始めようとしているんでしょう。

そこから考えると、競技人口から言ってレース、格ゲー、サッカーはやりやすいでしょうし、外の団体にいちゃもんつけられることもFPSよりは少ない。

何もないところからFPSの偏見をなくすって、そりゃ無茶な話ですよ。費用対効果から考えたらやるだけ無駄です。銃で人を殺すゲームなのは疑いようのない事実ですからね。何も知らない他人からしたら「FPSはスポーツ」って、「エロゲーは文学」って言葉に近いです。

まずは他のジャンルでe-Sports産業を興すこと。
もし、興すことができたら
「海外でe-Sportsと言えばFPS!」
なんて宣伝で普及を測ればいい。

今のところ、e-Sportsの普及を図る最善策をとっているように思います。
それでも、私は難しいだろうと思っていますが。

tEchno

Fatal1tyを例に出しておいて、FPSはちょっと……って言うお話がなんとも……。
FPSが競技タイトルに入らない理由に関しても、イマイチ納得がいかない。銃で人殺しをするゲームは駄目で、拳で人を殴り倒すゲームや、各種兵器を用いて何十何百という命を散らすゲームは良いのだろうか、と言う疑問が付いて回る。
競技タイトルとして入らない理由を挙げるならば、「適当なタイトルが無いから」の方が一プレイヤーとしてはまだ納得出来た様に思う。

個人的に気に食わない点は、インタビューとは言え「我々はこれこれ、こうやって、これだけの事をして、これだけ頑張っています」と、主張しているようにしか見えない点。
一企業が収益化を目標として、大会運営を行う以上、努力過程を如何に主張しようとも客(観客)や取引相手(大会参加プレイヤー)には関係の無い話だ。
つまりnegitakuを見ている様な我々には実の無いインタビューだ。