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2年連続『Dota 2』世界王者『OG』のJerAx選手が現役引退、本来の自分、競技者としての自分との剥離を実感した末に決断

2018年、2019年のDota 2公式世界大会を制した Europe OGの Finland Jesse “JerAx” Vainikka 選手が、現役を引退すると発表しました。

『OG』のJerAx選手が現役引退

Finland JerAx選手は、チームを支える「Support」の役割を担当するプレーヤーで、敵の無力化、チームの主体選手を死なせないなど、頭脳的なプレーで2年連続世界王者の達成に大きく貢献したプレーヤーです。

プロゲーマーの獲得賞金額を記録する「Esports Earnings」のサイトでは、生涯獲得賞金額「約647万ドル(約7億円)」で歴代2位につけています

JerAx選手が公式サイトに寄せたコメントによると、競技としてゲームに向き合う自分は、本来の自分とは異なる姿になっていると感じ、Dota 2をプレーする意欲や情熱が全くない状態であることから、選手を引退し異なる道に進むことを決断したとのことです。

JerAx選手のコメント

なぜDota 2を辞めるのか?

自分は創造的である事を好み、人生にその考えを取り込みたいという強い想いがあります。ゲームは制限がなく、他の人と経験を共有出来ることからその想いを実現する素晴らしいプラットフォームでした。自分は物事がどのようにして現在の形になっているのかについてよく疑問に思い、自らに問いかけています。そして、その標準モデルを別のものに置き換える方法について模索します。

ゲームとしてのDota 2は無限のバズルで、解決方法は提供されますが、完全に解読することは出来ません。Dota 2をプレーするようになってからは学びの連続でした。プレーを重ねるにつれて、ゲームの情報と知識は自身に圧倒的な影響を与えるようになり、ゲームに関するあらゆる詳細について理解しようとする、ある種の依存症ともいえる状態でした。

成功すると充実感と感覚を得ることが出来ます。一歩踏み間違えると、そこからフラストレーションや激高を感じる事になることもありますが、それでも挑戦し直すことを推奨します。これらの感情は、初期においてはゲームと自分を深くつなぐものでしたが、次第に薄れていきました。それは、自分がゲームを競技と見なすようになったためです。

競技環境は突き詰めていくと競技者を最高の状態へと押し上げていきますが、それを維持し続けるのは不可能です。多くのトーナメントがあり、各チームが能力を次々にテスト出来る現実は残酷なものです。トーナメントの開催スパンが短いため、大きな変更はチームにとって大変なリスクを伴います。優勝したかった、学ぶ経験としたかったという個々の思いとは関係なく、悪い結果が続くと参ってしまいます。大会出場者の多くは敗者であり、トップに行けるのは一握りです。自分自身、チームメイト、所属組織などから成功についてプレッシャーがかかります。それは精神的な戦いであり、あなたの競争心を煽り続けます。

この文化の中で生きていくことは自分にとって大きな打撃となりました。毎年の「grind(猛練習)」について考えることは自身に無関心、消耗、無感覚を感じさせるようになりました。このように語る事実から、あなたは私の何かがオフになってしまっていると感じるかもしれません。各シーズンの間、このような感情を受け付けないようにせねばならず、あまりに考えすぎないように前進し続けることを学びました。ゲームに対する情熱はそこにありましたが、自分に全て大丈夫だとウソをついていました。実際はそうではなく、自分とは違う何かになろうとしていたのです。

自分が混乱しているのは、勝利そのものが自身に喜びをもたらさないということです。喜びを実現するのは、チームで思いつき共有したアイデアや、最終的に違いを生み出す洗練された詳細です。自分にとっての真の勝利とは、改善が目の前に見えた時、チームメイトが提案を考慮し受け入れてくれた時など日常的に起こる事柄です。そのようなチームメイトは、終わりのない自分の失敗も受け入れてくれます。

ゲームプレーを最適化するには、発明や創造など必要とすることがたくさんあります。しかし、パフォーマンスを向上させることを目的としていない場合、多くの場合は時間の無駄となります。

そして、自分にとってそれは受け入れ難いことになっています。常に競おうとし、勝利を目指しプレーを成長させていくことに疲れてきました。自分がどのように考え、行動し、そして自分が何者であるかという事と矛盾しているのです。

自分はすでにDota 2をプレーする意欲も情熱も持ち合わせておらず、競技者という立場に自分を合わせていくのに苦労しています。別の道に進むという決断は明白であり、そのことに何の疑いもありません。

自分はプロフェッショナルプレーヤーとしてのポジションを手にすることが出来て非常に幸運で、どのようにしていまの状態までたどり着いたのかよくわかっていません。小さな事が違っていたら、自分が成功することは決してなかったでしょう。

この10年間、Dota 2コミュニティが進化していく過程を見てきました。コミュニティの裏側で情熱を燃やす人々を無限にリスペクトしています。あなたがいなければ、現在のDota 2シーンは存在していません。

Dota 2を通じて出会い、話をし、共にプレーした全てのみなさんに感謝します。

OG Dota 2

  • Australia Anathan “ana” Pham (Carry, 次シーズンまで休養)
  • Finland Topias “Topson” Taavitsainen (Mid)
  • France Sébastien “Ceb” Debs (Offlane)
  • Finland Jesse “JerAx” Vainikka (Support, 引退)
  • Denmark Johan “N0tail” Sundstein (Support)

JerAx選手はアクティブメンバーから外れはしますが、『OG』には引き続き所属していくとのこと。日本時間の2020年1月29日(水)3時に公開が予定されているドキュメンタリ『True Sight: The International 2019』のワールドプレミアイベントにも出席予定です。

また、OGは「Carry」担当の Australia Anathan “ana” Pham 選手が次シーズンまで休養を継続することも発表されており、Europe OG は世界大会優勝のメンバーから2人が欠ける事になります。

日本にもプライベートで来てくれたJerAx選手

Finland JerAx選手は上記の通り、非常に頭の良いプレーヤーという印象です。
2017年に完全プライベートで日本旅行にやってきて、日本のDota 2ファンと交流したいとスポンサーであるRed Bullに協力を求めて東京で自らファンミーティングを開催してくれました。

サイン、記念撮影、質問など1人1人に丁寧に対応してくれた人間としても優れた人物です。2018年の世界大会で得意のRubickを使い、敵が使用するEarthshakerのスタンスキルをコピーしてチームを勝利に導いたのは非常に印象に残っています。

Finland JerAx選手には色々と楽しませんていただきました。
これからの活動でもさらに素晴らしい人生を楽しんでいただきたいと思います。

LYEさん、翻訳のアドバイスありがとうございました

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この記事を書いた人
Negitaku.org 運営者(2002年より)。Counter-Strikeシリーズ、Dota 2が大好きです。 じゃがいも、誤字脱字を見つけるのが苦手です。

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