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『ARTISAN』代表に聞く今後の展開やブランドの未来、新製品RMシリーズは最後の布製マウスパッド

国産ゲーミングデバイスブランド『ARTISAN』代表・小林敏博氏に、ブランドの未来や今後の展開についてお聞きしました。

『ARTISAN』小林氏に聞く今後の展開やブランドの未来

ARTISAN小林代表が東京にやってくることにあわせて、7月18日に気の知れたメンバーが集まり、近況報告を行ないました。この記事では、さまざまな話をした中でARTISAN製品に関する部分をまとめて、内容を確認の上で掲載しています。

参加者

  • 小林敏博:ARTISAN代表、製品開発責任者
  • 田原尚展:ARTISAN製品開発等に参加。ゲーミングコンテンツプロデューサーとして活動。
  • yukishiro:eスポーツキャスター。ARTISANはプロゲーマー時代にチームスポンサーだった。今回はリモートで参加。
  • 884:ARTISANのお世話になっていた人物。今回、スポンサーの関係で名前は出せず。
  • Yossy:当サイト運営者

小林氏はあまりメディア露出をしない人物として知られており、これまでにインタビューに答えたのは下記の2記事しかありません。

2010年
国産のゲーミングマウスパッドを展開する『ARTISAN』開発者インタビュー、新製品や今後の展開に迫る
https://www.negitaku.org/news/n-13453

2016年
孤高の国産マウスパッドメーカー『ARTISAN』インタビュー。PC業界の有名人・小林敏博氏に来し方行く末を聞く
https://www.4gamer.net/games/102/G010223/20160807001/

当サイトとしては12年ぶりに直接お話を聞く機会となりました。
インタビューという形式ではなく、上記参加者が集まって雑談していた形でした。そのため、参加者の写真などがありません。絵的には寂しいですが、内容としてはかなり面白いものになっていますので、以下よりご覧ください。

トッププロにも増えた『ARTISAN』マウスパッドユーザー

小林:今回の集まりは窮屈なものじゃないんで。飲んだり食べたりしてください。

Yossy:お会いするのは数年ぶりですよね。最近のeスポーツシーンについては、ご覧になったりしていますか?

小林:正直ね、eスポーツ業界の現状とか全然知らないんですよ。最近まったくウォッチしていないんです。何年か前から決めているの。まわりのことは気にしないと。

田原:あまり関係ないですしね。作る物は変わらないし。

yukishiro:小林さん、全然eスポーツシーン追いかけていないということですけど、VALORANTで世界大会に行った日本のNORTHEPTIONというチーム、ARTISANのマウスパッド使っていましたよ。

VALORANT Champions Tour: Stage 2 Masters Group Stage
4名がARTISANのマウスパッドを使用するNORTHEPTION

田原:僕が送ったヤツみました?配信の動画、一応送ったんですけど。

小林:あまり見てない。

田原:せっかく決勝見ながらリアルタイムでクリップ作ったのにw

884:26,000人が来場した大会でARTISANのマウスパッド見られていましたよ。

Yossy:本当にARTISANを使うチームとかプレーヤーが増えていますよ。Quake Championsでも王者のraphaが使っていたり、VALORANTの国際大会でも使っている選手がたくさんいますよね。

yukishiro:VALORANTの世界大会はスピード系のマウスパッドを使っている人が多いですよ。

田原:「ゼロ」が最初の方に流行ったのは想定通りだったけど、そうじゃないマウスパッドにいっている人もいますよね。

NINJA FX ゼロ / 有名海外製マウスパッドに似た操作感。しかし,それよりも軽快な滑りでシャープな操作感。[製品ページより]

小林:「ゼロ」なんて、10年くらい前に流行って欲しかったよ、本当に。

Yossy:あれ、ARTISANって2009年からでしたっけ。何気に10周年は超えてますよね

小林:そうだったかな。あまり覚えていないんだけどね。

「シデンカイ」は「RMシリーズ」バージョンが登場予定

小林:近年のゲーミングデバイスで一番大きいのは、マウスの進化だよね。マウスの進化でポインタが飛ばないようになった。ようやくマウスがまともになったと言ってもいいのかな。

※2010年のインタビューでは、一部のマウスがARTISANマウスパッドで正確なトラッキングができず飛んでしまうという問題があったエピソードが紹介されています

ARTISAN ボス: 1 ~ 2 回やりとりがあって、あちらの主張は「動くはずだ」というものだったんですよ。
でも試してみると動かない。その後に Razer DeathAdder の新しいファームウェアが出て認識されるようになったのかな。

田原:いま一番飛ぶと言われているのが「ライデン」。でも、ほぼほぼ飛ばなくなってきていますね。

NINJA FX ライデン / 細い糸で高密度に編み上げた生地により布製とは思えない速い滑り、滑らかな滑り。軽い操作性は素早いマウス移動がしやすく疲れない。縦にもマウスを多く移動させるゲームにも最適です。[製品ページより]

小林:でも、飛ぶと言われているのに使いたいという人が結構いるんですよ、海外にね。「ライデン」はね、中国にも卸しているんだけど中国のプロが好むらしいんですよ。なぜかわからないけど。

田原:国内の元VALORANTのプロ選手だった某氏も元々「ライデン」を使っていて、試合中に(ポインタが)飛んでいるんだけれど、「飛ぶけど使う」と言って使っていたらしい。Lazさん(ZETA DIVISION)も一時期「ライデン」使っていたよね。

Laz選手。『2022 VCT Stage2 – Challengers JAPAN Playoff Finals Day2』配信映像より https://youtu.be/W92taElCJdE?t=12974

yukishiro:Lazはまた「ライデン」に戻っていたんじゃないかな。確か「ライデン」だったはずだよ。一回「ゼロ」にしていたと思うけど。

田原:どうかしちゃったのかと思ってw VALORANTのゲーム性で、なんで「ライデン」なんだろうと。

小林:飛ぶとかうるさいから、布がなくなった時点で一回やめたんだよ。だけど要望があるから、いまも作っているけどね。

田原:いまコミュニティから阿鼻叫喚になっているのは、「シデンカイ」が出ていないことなんだよね。公式にはアナウンスしていないけど、製造していない、終売という状態で、みんなパニックになっていて。

小林:もうすぐ出ます。

Yossy:おお、良かった。自分のところに「なんとかならないのでしょうか?」と個別に問い合わせが来たりしていて。

yukishiro:Yossy相談所w

NINJA FX シデンカイ / ガラスコーティング特有の抵抗感の少ない滑り。ARTISAN の製品の中で最も初動も滑りも速い。 しかし、ガラス板のようにソリッドでは無い。柔軟性もあるのでガラス板や樹脂板よりも止めやすい。 マウスの動きが多いゲームのユーザーにもお勧めです。[製品ページより]

小林:いまでも出そうと思ったら出せるんだけども、形を変えたいんだよね。あれって、作るの結構大変なんですよ。製造数とか研磨しないといけないとか色々ね。作るのにすごく手間がかかる。

いま、生産する工場を変えたの。縫製するところとかもね。なぜかという理由があって、いままで頼んでいたところはキャパがいっぱいで、どうにもならなくなってしまったの。

工場を変えて製造すること自体は問題ないのだけど、前の工場と同じ事を最初からやってもらうのはなかなか酷なので、今のままの形だと出せないんですよ。
じゃあ違う形にしようと思っていて、前から言っている「RMシリーズ」として出そうと考えているんだけど。でも、「RMシリーズ」に使う粘着テープの開発に6年かかっているんです。

Yossy:6年!?

小林:6社くらい試したかな。

田原:要件として難しいのは、貼り合わせのときにできるだけ薄くしないといけないとか、固くなっちゃうと中間層の良さが活きないからとかですよね。

小林:両面テープって、真ん中に基材というのが入っているんだよね。PETのフィルムとか、不織布だとか。その真ん中にそれぞれ粘着を付けるんだよね。これが両面テープなの。それを基材レス、基材なしにする。これが難しい。

でも作れるところはあるの、大手メーカーとかね。バンソーコーとかあるでしょ。作る技術を持っているところがあるのはわかっていて、それをそのまま使って作ってもらえれば良いんだけど、これが小さな会社の悲しさなんですよ。作っていただけない。それで苦労しているの。それが出来るところを中小の会社で探さないといけないのだけど、中小というのは技術的に大手よりは劣るんだよね。

それで、粘着はテストに時間がかかるから。貼り付けてから経過を見なくてはならない。1ヶ月とか2ヶ月余裕でかかるでしょ。それでダメだったらまた作ってテストをやり直すから、時間がものすごくかかる。1社で1年試して出来なかったら、1年がパーになってしまう。本当はリリース寸前まで来ていたものがあったんだけどね。

田原:マウスパッドの開発に6年とかかかっているって、なんか良いですね。秘伝のマウスパッドじゃないけどw RMシリーズは出るぞという雰囲気になってから長く経っているじゃないですか。

小林:出せたんだけど、エンドユーザーのことを考えると完璧じゃないとクレームが来るじゃない。それがイヤだったの。機能的には全然問題ないんですよ。こう、(表面素材を)スポンジの上に置いて貼るじゃない、で、(表面素材は)動かないのね。

だから操作には何の問題も無いの。ただ、ピタッ!とくっつかないんだよね。こうやると簡単にはがれちゃうの。機能的には全然問題ないんだけど、これを心配する人が絶対に出てくるのよ。

田原:詳しい人なら良いけど、カジュアルな人が買った場合にこの部分は問題になりそうかなというのはあると思いますね。

小林:これは試作のサンプルの前のサンプルなの。これをベースに改善していくのね。これ試しに剥がして貼ってみてくれる?慎重にね。

yukishiro:触りて~!

小林:剥がすのも結構難しいの。簡単に剥がれるようにしてあげないといけないけど、あまり簡単に剥がれるようにしちゃうと、その前に剥がれちゃうんだよ。

田原:これなかなかテクがいりますね。危ない危ない危ない!これ粘着同士が貼り付いちゃったら終わりなんで…

884:うわ、難しい

小林:だからテクがいるようじゃダメなんですよ。粘着同士がくっついても大丈夫なように考えてあげないといけない。もう一回剥がせるように。感覚としては貼るというか置く感じなんだよね。置いてから表面をさすれば空気が抜けていくから。あと、それは新しい布なの、開発中のやつ。それの特徴は、完全ではないけど縦と横の滑りがほぼ同じにしてあるの。

RMシリーズの中間層は3種類展開

小林:あのオレンジのスポンジも3種類あるんですよ。「SOFT」「MID」「XSOFT」と。

田原:RMのスポンジって、いまのARTISANのスポンジとちょっと違っていて俺はこっちの方が面白いと思うんだよね。

小林:それ天然ゴム系なんだよね。

yukishiro:中間層が違うってことか。

田原:ブニブニやってもらうとわかるんだけど、こっちの方が粘りのある弾性というか。

小林:反発弾性はこっちの方が高いんですよ。

田原:押した時に跳ね返りが強いから切り返しとかが速いのこっちの方が。

小林:これも3年かかっているからね。

田原:RMシリーズだけじゃなくて、現行の中間層版も欲しいってリクエストしていて。

Yossy:5~6年くらい前にいただいたサンプル版、いまも使っていますよ。これめちゃくちゃ良いんですよね。他のパッドと重ねて使っています。

下側が昔のサンプル版。2016年撮影。

小林:売り始めたら、これだけ買う人も出てくるんじゃないかという話をしているんだけどね。切り返しの俊敏性があがるんで。

田原:すごくレスポンスがよくなるというか、クイックな感じになる。

小林:それも大変だったのよ。最後はゴム会社が音を上げていたの。

yukishiro:RMって以前より厚めに作っているんですかこれ?

小林:前は薄く作っていたんだけど、厚くしないとダメだということで、いまは厚くしている。

Yossy:これ何ミリくらいですか?

小林:4ミリだね。

yukishiro:結局、いつ出すんですかRMシリーズは?

小林:いつ出るか?もうちょいだなぁ…。

yukishiro:アバウトだなぁw

小林:出そうと思えば出せるんだけど、クレームが来るのがイヤだから。クレームがこないようなところまで完成度を高めて。言えるのは、RMシリーズの第1弾は「シデンカイ」。なぜかというと一番価格が高いから。高いからRMシリーズにして安くつかってもらえるようにしたい。

Yossy:ああ、そういうことか!

小林:一番高いやつだから、今のに比べたらランニングコストを抑えられるようにする。この「シデンカイ」は表面が大分滑らかになる。いままでのと比べると。スピードでいうといまの製品の方が速いけど、かといってものすごく遅いかといったらそんな事も無くて、どう言えば良いんだろう、すごく感じが滑らかだね。漆喰の壁をなでているような。ツルツルというよりも、止めやすくなる。

滑走面は発注していて納品されているんですよ。すでにあるの。いままでのやり方で出そうと思ったらいつでも出せる。だけどそれはやらないと決めている。RMシリーズで最初に「シデンカイ」を出すから。

『ARTISAN』の布パッド新製品開発は「RMシリーズ」が最後

yukishiro:VALORANTでARTISANの海外使用率が高かったり、注目されている理由って、CS:GOとは違って、マイクロフリックが多いから初動の滑り出しの安定性がわりと求められているのかなって。世界最強のスナイパーOpTic GamingのyayとかはそういうプレーをARTISANのパッドを使ってやるんで。

884:いま縦の動きめっちゃ多いですよ。横の動きだけのゲームってないですもん。

田原:俺は縦の動きだけ速くしたヤツとかほしいですね。

小林:それはやろうと思えば出来ちゃうんだけど、また種類が増えてしまうよね。これはもう、布には限界があると思う。基本的に、ARTISANの布マウスパッドはここで終わり。

Yossy:布パッドは終了…!?

小林:提供自体はやめないよ。新しい商品を布で作るのはRMシリーズが最後。違う素材にいく。

884:◯◯素材の構想ありましたよね。

小林:対トラッキングは最強ですからね。無敵。(マウスポインタを)飛ばせるやつがいたら飛ばしてみろというくらい。絶対に飛ばない。

Yossy:〇〇パッドの研究はずっとやっているのですか?

小林:〇〇に限らず、新素材の試作をやっている。様々な試作も大体終わっていて、そのまま商品にしても良いくらいのところまでは来ているんだけど、いま色々大変なんですよ。出すと売れてしまうの。

Yossy:売れてしまう…?

『ARTISAN』製品が手に入りにくい理由と改善

田原:海外コミュニティのDiscordとか、色々潜入してチェックしているんだけどARTISANファンDiscordみたいなのがリージョンごとにあって、BOTを組んでいてみんな。ARTISANの公式ECサイトに入荷があった瞬間、通知がいくようになっていて。

一同:wwww

田原:それがいっぱいあるの、しかも。入荷した瞬間にみんなワーッと買いに来る。だから、入荷すると売れてしまって面倒くさいっていって、入荷数を絞ったりしていてw

小林:そうしないと、出荷量に限界があるの。出せないの。

Yossy:製造が間に合わないという事ですか?

小林:作る方は大丈夫。前は作るのも大変だった。この1年くらいでラインを増やしたりして体制を整えたんだよね。

Yossy:作る方は問題が無いけど、発送作業の方が間に合わない。

小林:出来ない。発送も自分たちでやっているから。パートさんにも手伝ってもらっているけど大変です。いまアウトソーシングで梱包から発送までやってもらおうということでここから1年くらいかけて全部移行しようという。そうすると物流の問題も解決するのね。いまの年間販売数って〇枚くらいなのね。

884:えっぐ!

田原:えぐいよね。発送の問題があるから絞って売らないようにしているのに。

『ARTISAN』の未来と後継者問題

小林:でもこれって世界のシェアでいったら1%いくかいかないかだから。ARTISANはシェア50%を取ろうと思っている会社じゃないのね。取ろうと思ったら出来るんだけど、私がやっている間はある程度の販売数があれば良いと。その後はどうなるかわからないけどね。ある程度シェアが取れるようになってくると、ARTISANのロゴが入ったキーボードとかが売れるようになるわけですよ。

Yossy:ARTISANのマウスとかほしいですよね。

小林:そういうビジネスモデルは考えられるんだよね。しかも全部国産でいけるんですよ。マウスはちょっとてこ入れすれば国産に出来るから。ヘッドフォンも作ろうと思ったら作れるし、マウス・マウスパッド・キーボード・ヘッドセット、全部国産でいけるんですよ。

ARTISANブランドで全部揃えれば、一気にマーケットを拡大出来るんですよね。でもそれは私ではなくて、次の人なのか会社なのかわからないけど、そこがやればいいんじゃないという。

Yossy:そこは正直気になっていて。ARTISANってみんな使っていて無くなったら困るものなわけじゃないですか。後継者とかどうするのかなって。

田原:無くなるとゲームが出来なくなる人、いっぱいいますからね。

小林:そこは責任があると思っている。誰かに任せたり拡大展開したりするかもしれないけど、まずは自分とかみさんがいなくても自走できるように整えている(※基本的にARTISANはこの2人で展開している)。

物流をアウトソーシングしたり、受注管理は別の人間に任せていたり、他の人が出来るように仕事を変えていっているんだよね。それが整えば、自分とかみさんはそういう物理的な作業はやらなくてよくなって、判断だけしていけば良くなる。そういうことを進めているところ。死にそうだったんだからもう。

Yossy:忙しすぎてということですか?

小林:製品の開発、発送、サイトの更新、ブログラム、サーバー管理、経営から事務所のトイレ掃除まで全部やっているんだから。へとへと。パートさんにも来てもらったりするんだけど、もう在庫入れなかったら良いじゃないかって。

田原:売らなければ良いじゃんって。売り切れだったら発送作業をやらなくて良いぞと、謎の発想に帰結したという。

一同:www

Yossy:売れ行きは、国内と海外だとどんな割合なんですか?

小林:もう海外が圧倒的。7割くらいかな。日本も前よりは増えているかな。

yukishiro:それって多分、VALORANTの逆輸入効果ですよ。海外のプロも使っているし、日本のトッププロも他のデバイスメーカーさんがスポンサーでついているのに使っていたりしますし。

884:宣伝とかほとんどしていないのに知名度がすごすぎる。こんなメーカーは他に無いですよ。いま、みんなインフルエンサーとか宣伝にお金をかけたりしているのに。

小林:宣伝にお金かけるんだったら、その分、製品を安くするとか、そういう風にしてあげたいって思うよねやっぱり。でもいまは原材料も上がってきているんだ。全部が10%とか。だから、少しだけ値上げさせてもらったんだけどね。小さい会社は、原材料を安くしてもらえないんだよな。なかなか思ったようにいかないよね。

田原:前職の広告代理店業でBtoCのプロダクト関連の業務ばかりやっていたんですけど、ここまで熱狂的に愛されているブランドってみたことがないんですよね。スポーツブランドとかRed Bullさんとかもすごいんですよ確かに。

でもそれとは違うレベルで。なんだったら買うなというと言っているくらいの勢いで手に入りにくいですよ。サイトも海外のユーザーからしたら使いにくいところはあるわけだし、いつ入荷しているかもわからないというレベルなのに、みんな張りついて買おうとするという。

さっき見ていたYouTuberさんもそうだけど、お金を払っているわけでも製品を送っているわけでもないのに、全部自分で買ってARTISANマウスパッドのティアーリストみたいなのを作っている人がいっぱいいるんだよね。海外コミュニティはものすごくて、ARTISANを悪くいうと追放されるところがあって。

一同:wwww

田原:それは良いのか悪いのかと思ったんだけど、本当にそのレベルで、「ARTISAN買ったけど合わなかったわ」というのはみんな納得するんですよ。「まあそれはね」って。「ARTISANはこうでクソだった」と言った瞬間に「お前はマウスパッドを使う資格がない」くらいのことをみんなから言われて、すごすぎると思いながら見ていて。

あと面白いのは、ARTISANのサイトの使い方がわからない人に答えてくれる謎のDiscordがある。「ARTISANのサイトに問い合わせをしたけど1週間くらい返事がないんだが、俺は大丈夫なのか」という相談があって「いま日本はこういう祝日だから、しばらく返ってこないよ」という風に教えてくれたりとか

Yossy:すげー、なにそれw やさしいねw

田原:謎のコミュニティに支えられているARTISANw

小林:面白いよね。なんでそうなっちゃったんだろうw

田原:普通はありえないですよ。他で見たことがない。

Yossy:普通はサービス悪いなとか、わかりにくいから買わないという風になりますよね。すごすぎる。

小林:自分なんかは内心思うけど、「そんなに良いか?」って。自分で作っているから、ここが改善点だなとか色々出てきますから。

田原:小林さん的にベストまでいっていないにしても、現状の選択肢の中では頭抜けたマウスパッドだという話だと思いますよ。

小林:布は難しいんですよ。金属加工とか電子製品は一回作ったら寸分違わず同じものがどんどん出来てくるじゃないですか、織物というのは同じものというのは2度と無いんですよ。毎回違うの。前のマウスパッドと感じが違うって、それはそうなんだよ。前と同じものって作れないの。そこはユーザーの皆さんにわかって欲しいんだよね。

田原:そのうちワインみたいな売り方しましょうよ。「ヒエン」MIDの何年ものはすごいとか。

Yossy:今年のARTISANやばいぞみたいな。

小林:でもこの年の布は出来が良いな、というのは実際あるんですよ。

yukishiro:これから出る製品に年数付けるのありかもしれないですねw

小林:全く同じ設計でも、布を織る機械が違うと別物になるんですよ。前にお願いしていた工場は、機械の部品が古くなって、不良品が出るようになっちゃったのね。仕方が無いので別のメーカーに変えたんです。これが「ゼロ」がちょっと変わったと言われる理由です。

同じ設計なんだよ。でも前の方が滑らかなんです。新しい方がざらつきがある。これはうちが意図したわけではなくて、同じ設計なんだけど作る会社を変更したから、変わってしまったのね。

それで、新しくお願いした会社もこのご時世で素材が入ってこなくなってしまったんですよ。そうしたら、前のメーカーが機械を直したというから、また元に戻したんです。それで元の「ゼロ」に戻ったわけ。そうすると、また今と違うと言われちゃう。

田原:基本的に僕がモニタリングしている限りは、ちょっと変わったっていう話が出ると「新しい方が良い」の方が圧倒的に多いんですよ。ゲームのマウス感度設定をころころ変えた方がパフォーマンスが上がるというのが学術的に証明されてきていて、ちょっと製品が変化している方が脳がサボらないので、丁寧にやるようになった結果当たるようになったみたいなことがあるんですよね。

小林:布に関しては苦労が絶えない。不良が出たり、染色でも薄くなってしまったり。

画像が全くないので、ルームサービスで登場した「ザ・ペニンシュラ東京 “マイラーメン” by 一風堂」を掲載

他メーカーのマウスパッド製品について

小林:前は他のメーカーのマウスパッドもウォッチしていたけど、無駄だということがわかったよね。

Yossy:小林さんから見て、他メーカーのマウスパッドというのはどうなんでしょうか?

小林:進歩していない。進歩していればいいんだけど、進歩していないから。デザイン変えただけで新製品になっちゃうんで。模様変えただけじゃんって。

田原:冗談抜きに、昔からあるマウスパッドとか、全く変わっていないんですよ。この前も買って剥がしてみたんですけど中間層の素材とか酷すぎて、まだこれなんだということがあったし。

小林:でもユーザーも悪いんだよ。使い続けているから。作っている方からすると、売れているうちはそれで良いじゃん。別に変える必要ないわけだから。

Yossy:これはちょっと違うなというマウスパッドはあったりしますか?

小林:1つだけあった。無くなってしまったけど。いいマウスパッドを作りかけていたんだよ。本当に感心したんだよ。工業レベルとしてさ、これは出来が良いなと思っていたものがあったの。マウスパッドとして良いかは別にして、工業製品としては出来が良いよなと思ったもん。あれは真似したいよなと思ったよ。出た時にちょっと背筋が寒くなったよ。

田原:SteelSeries DeXでしたかね。

小林:マウスパッドとしてはいまいちだったんで、完成度を上げればこれはすごいぞと思ったの。

田原:デバイスって、各メーカーさんあまりマウスパッドには注力していないんですよね。マウスとかキーボードはどんどん出るんですけど。多分話題になりやすいからだと思いますけど。あとは変えたときに違いがわかりやすい。

いまだにアメリカのゲーマーとかもマウスパッドでパフォーマンスなんて変わらないよという論調の人も多くて。デバイスを変える順番でいった時にはやっぱりマウスが先に来るよねと。マウスパッドは最後。

小林:俺はその逆。絶対に逆だと思うけど。むしろマウスなんて何でも良いじゃん。持ちやすければそれで。

田原:いまはそんなにひどいマウスってないですからね。昔は俺が愛用していた何をしても飛ぶマウスというのもありましたけど。

小林:マウスは軽い方がいいって言い続けていたんだよ俺は。10年前から言っている。ようやくそうなってきたでしょ?慣性の法則なんだからさ。重たいものを振り回していたら止めやすいわけがない。物理の法則だから。他のスポーツギアを見てもそうなっている。eスポーツのギアだけ別なんていうことはなくて、同じなんだから。

ARTISAN ボス: 個人的には、「マウスは軽ければ軽いほど良い」という認識は 95% くらい賛成できますね。
重ければ重いほど慣性の法則でマウスを止めるのにエネルギーが必要になってくるわけじゃないですか。軽ければそれが少ないわけですから、止めやすいわけですよね。
どう考えても重たいものを使うというのは負担が大きいわけです。
軽いほど良いとは思いますけど、剛性だけはちゃんと確保して欲しいですね。
剛性がないと、挙動に乱れが発生してしまいます。
車であればカーブを曲がる度にキシキシいいますし、挙動も乱れるわけです。
やはり、剛性というのは最低限確保されている必要がありますね。

田原:マウスパッドの違いは、ここにいる人はみんな使っているからわかるけど、触ったことない人に伝えるのは難しいなと思いますね。言葉で説明しても、売る側はそういうでしょうね、になってしまうし。

いまだと、VALORANTのトッププロがオフラインの試合で使っているっていうのは、言葉がいらないレベルの証明ですよね。違うメーカーがスポンサーなのにARTISANを使っているというのは強いなと思いますよ。

『ARTISAN』の新たなカラーとして「オレンジ(橙)」登場

小林:RMシリーズの「シデンカイ」、色は橙です。滑走面の色が橙になる。

Yossy:オレンジ!?全製品オレンジですか?基本カラーがオレンジ?

小林:もちろん黒も出しますけどね。

yukishiro:あれ?SteelSeriesもオレンジだよね?

884:SteelSeriesはオレンジが基調カラーですね。昔だとSteelSeries DeXの裏面とか、マウスのSteelSeries Kanaにオレンジが使われていましたよ。

yukishiro:オレンジにして、SteelSeriesと戦いにいくのかと思って。

田原:赤じゃなくてオレンジにしたんですか?

小林:赤も出すけど、理由は単純に橙がきれいだから。橙に憧れていたの。前から使いたかった。

田原:勝手に「ヒエン」のイメージで『ARTISAN』というと「赤」という印象になっていますから。

Yossy:確かに。あれはオフラインで使っている人がいるとすぐにわかるから良いね。

小林:赤はやめないですよ。やめないけど橙が基本。

田原:Cooller (Quake Championsのプロ) とか製品名を認知していないもん。マウスパッド必要かって聞くと「赤いヤツか?」って言ってくる。いい加減覚えろと思うんだけど。

一同:www

Yossy:シャアみたいなw

NINJA FX ヒエン / 軽い滑りなのにしっかり止められる。ネットでも評価の高い布製の新定番。万人に扱いやすい操作性が特徴。契約してないのに使ってる海外プロ選手もいます。[製品ページより]

コアな海外レビュアー

Yossy:さっきYouTubeのレビュー動画をご覧になっていましたけど、結構みるのですか?

小林:あれは田原君が見せてくれた。YouTubeは、うちのかみさんの親戚がハワイにいて「YouTubeにARTISANの動画がいっぱい上がっているのを知っているか」って聞かれたらしいの。「知らない」と言って見せてもらって、帰ってきて俺に教えてくれて「ああそうなんだ、本当だ!」っていう感じですよ。

田原:レビューも結構すごくて、boardzy君というYouTuberが「シデンカイをはがすと、ヒエンの新品が出てくる」という動画を出していて、これ本当にそうなのね。ヒエンの生地の上にPETを貼っていて。でも、それをARTISANが言う必要はないじゃないですか。バラして使うとは思っていないし、バラすと粉とか出るから危ないし。でも「ARTISANがこれを言っていないのはバカだ!シデンカイを買えば2つマウスパッドを買ったのと同じだから得だ!」とか言っていて。

小林:それは違うと思うけどねw でも布はなんでもよかったの。ヒエンは流用しただけで。だから今回のシデンカイはちょっと変わる。前と比べると。

田原:「ヒエン」の新しいヤツと古いヤツを顕微鏡で比べてくれていた人がいて、古いのは表面が毛羽立ってくるから滑りが変わってくるのかなと思っていたんですよ。そうじゃなくて、編み目がゆるんでいるんだよね。

yukishiro:ゆるむんだ。

田原:そうそう。そうすると表面のパターンが変わるでしょ若干。荒くなるっていうか。

小林:あのパターンはそうだね。よく見ているよなあ。

『ARTISAN』より当サイト20周年マウスパッド登場予定

小林:サイトの20周年記念でマウスパッドを提供させていただきますよ。

Yossy:良いんですか!?ありがとうございます。

小林:これはサンプルでご覧いただければと思ってもってきたものです。それでいこうかなと思っているんですよ。

Yossy:中国向けのやつなんですね。忍者のロゴ。忍者とか侍が人気なんですか?

小林:色々作ったけどそれが一番人気あったかな。忍者なのはサンプルだからです。記念のロゴとか送っていただければ、その部分にそれをプリントして。カラーは新しいオレンジ。枚数は何枚でも。100枚でも200枚でも。2000枚とかでも良いですよ。

Yossy:2000枚?!いや、それはさすがに多すぎですよ。

小林:枚数が決まったら言ってください。本当に何枚でも良いので。

Yossy:ありがとうございます。田原君が色々企画してくれているので、そこに参加してくれた人に使ってもらえるとか良いですね。

Negitaku: THE GREAT 20 | Negitaku.org 創立20周年記念ファン企画
https://negitaku20.org/

ARTISAN公式サイト
https://www.artisan-jp.com/

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この記事を書いた人
Negitaku.org 運営者(2002年より)。Counter-Strikeシリーズ、Dota 2が大好きです。 じゃがいも、誤字脱字を見つけるのが苦手です。

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