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Xanverコラム:プロフェッショナルeスポーツマウス開発のアプローチ

元『ZOWIE』の製品開発者Xanver氏が、Facebookにてeスポーツに関するコラム『XANVER’S COLUMN』をスタートしました。

このコラムを翻訳する許可を得ましたので、以下で紹介していきます。

Xanverコラム:プロフェッショナルeスポーツマウス開発のアプローチ

私は、以前Counter-Strikeプレーヤーでした。若い頃は大会に向けて全てのエネルギーを注ぎ込んでいましたが結果が出ず、早々に引退する事を選びました。選手の期間に、Counter-Strikeを始めた時のように楽しんで投資することが出来る異なる領域を見つけました。選手から製品開発者となり、プレーヤー達に使いたいと思われるような製品を開発したいと思いました。

世界大会『World Cyber Games』に3回出場しましたが、自分のチームはいつも早々に敗退してしまいました。そこで、トップ選手達がデバイスをどのように使っているか観察し始めました。使用しているマウスのモデル、それぞれの形に対する握り方、操作している時の腕と手首の関係性を観察してきたことが、製品開発の糧となっています。


WCG 2003練習エリアにて

マウス開発を例に挙げると、自分は工業デザインを学んだことがなく、ソフトウェアエンジニアとしてのバックグラウンドもありません。自分が参加した製品開発が、マウス形状の次の形を決めるための設計図や、センサーを決める仕様書から始まったこともありません。プレーヤーの使用習慣やゲーム内でのテストからスタートしました。

まずおおよその方向性ついて話し合い、工業デザイナーと議論しながら、私自身の感覚に合わせてハンドモデルのシミュレーションを作ってもらいます。モックアップが出来た後は何度も使いこみますが、形状を少しでも変更するとグリップの感覚が全くの別物になるので、細部を調整していきます。粘土を使いながら修正の方向性をシミュレーションし、エンジニアが次の変更について理解出来るようにしていきます。プレーヤーと一緒に考えながらマウスの形状を決定するためには、一進一退しながら選手の意見を取り込んでいく必要があります。

次のステップはサイズの調整ですが、オリジナルのグリップ感覚が変わってしまうため単純に同じ比率で拡大・縮小すればいいというわけではありません。どの部分を独立して調整する必要があるかをエンジニアと相談していきます。その次に、実際にゲームで使った時のグリップ感や全体の操作感を再現したサンプルを作成します。この段階で不満な部分が出てきた時には、前の行程に戻って再調整する事もあります。
モックアップの数が多くなるのはこのためで、使用するセンサーを決定するよりもマウスの形状を確認していくほうに時間がかかると感じています。

私がセンサーをスペックで決定することはありません。各センサーのトラッキング、高速移動がパフォーマンスを低下させないか、リフトオフディスタンスが高すぎたり低すぎたりしないか、加速があるかないか、様々なマウスパッドでの互換性はどうかをゲーム内で試していきます。基準を満たさなかった場合はエンジニアに相談し、調節したバージョンを提供してもらいます。このテストを繰り返し全てが基準に達するまでには通常10週間以上を必要とします。

私の開発方法は、これまでの環境から与えられた理解とリスペクトを必要とする長期プロセスです。私は工業デザインの経験がないことを理解した上で、自分の思い描く形状を繰り返し確認していく必要があります。また、モックアップのコストにとらわれず、プレーヤーのとしての経験や使用習慣を尊重しながらエンジニアにリードされるのではなく、自分自身が製品デザインを導いていきたいと考えています。

過去に在籍していたチームがこの条件を満たしてくれていなかったならば、製品開発に情熱を注ぐことは出来なかったでしょう。最初は製品の設計方法がわからなかったため、多くの失敗を経験したものです。幸いながら、パートナーたちは失敗や成功を全て受け入れてくれたので自信に繋がりました。もちろん、過去に開発した全ての製品に満足しているわけではありません。

最後になりますが、私の経験に基づくアドバイスを現在のeスポーツ業界で働く事に情熱を燃やす多くの若者たちにお伝えしたいと思います。企業と仕事をする時には、彼らがお金のためにやっているのか、それとも自分たちの仕事に情熱を持って取り組んでいるのかを知っておくのが良いでしょう。これを知っていれば、こんなはずではということになりません。このことについては、別のコラムで書きたいと思っています。

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この記事を書いた人
Negitaku.org 運営者(2002年より)。Counter-Strikeシリーズ、Dota 2が大好きです。 じゃがいも、誤字脱字を見つけるのが苦手です。

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